9月27日、シマンテックは富士通のオンデマンド仮想システムサービス(企業のシステムをサーバーに仮想的に構築する仕組み)「FGCP/S5」にシマンテックのセキュリティー技術「Symantec System Recovery 2011」が導入されたと発表した。AmazonやeBayなども採用している技術だ。1ライセンスあたり月額1万円(予価)で利用可能になる。
この技術はシステム仮想化の際、データやシステムのバックアップおよび保護に使われる。災害や障害があった際、ファイルサーバーなど社内のシステムをすばやく復旧させ、業務を継続させるための仕組み。クラウドサーバー上の仮想マシンでも、そのバックアップ機能が使えるようになる。シマンテックでは「V-Ray」という技術を使い、VMware環境にある仮想マシンも物理マシンと同じように管理できるようにしているのが強みだ。
「クラウドはただのバズワードではない」
シマンテックCEOが語る
「仮想化」は今年1つのトレンドワード。シマンテックCEOのエンリケ・セーラム氏(Enrique Salem)が発表を終えた後、事業戦略として強調したのは、もう1つのトレンドワード「クラウド」だ。今後は「どこでも保護」という点が重要になると熱をこめて語った。
「クラウドはただのバズワードではなくITの将来のやり方だと思っている。これからのビジネスでは様々なクラウドサービスを通じ、“どこでも仕事とつながっている”状態になる。そのとき“いつでもどこでも保護する”方法を考えることが必要だ」(セーラム氏)
戦略の鍵は「あらゆるデバイスの管理」および「個人情報保護」という。
セキュリティースイート「Endpoint Protection」と、今年5月のベリサイン買収がそれにあたる。Endpoint Protectionは、企業のネットワーク(クラウド含む)に接続するあらゆるデバイスの管理/運用ができる“全部入りネットワークセキュリティー”としての面が強みだ。
その上で、クラウドおよび仮想化の保護にはまだ最適化すべき要素が多いと話す。
たとえばクラウドサーバーの保護にしても、社内向けのクラウドなのか、社外向けのクラウドなのかによってセキュリティーの優先度は変わる。仮想化時のバックアップにしても、今の企業では全体の約90%をバックアップしているが、バックアップが必要になるのはそのうちの一部でしかない。セーラム氏は1社の化学メーカーを例に挙げた。
「年間10億ドルを使い、化合物をつくっている会社がある。その最大機密に関わるデータは全体の1%、最も保護されなければいけないのはそこ。その1%を含む社内機密は20%で、あとの80%は社外とやりとりをすることになる。それをどんなレベルで保護するか。それぞれに最適な形を割り当てる必要がある」(セーラム氏)
シマンテックは「Symantec Cloud」というクラウド型のセキュリティサービスで、そうした細かい保護をかけている。保護技術のベースは前述のEndpoint Protection。同サービスによるバックアップ機能を使っているのは現在約5000万ユーザーという。
また現在は、TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワークにより、企業活動の“ウチ”“ソト”がくずれはじめている時代でもある。「企業活動がソーシャル化するにつれ、“プライバシーは必要だが、デバイスも管理したい”という機会が増えてくる。その境界線がどこにあるか、どう保護すればいいかを考えるのがシマンテック」とセーラム氏は話し、今後ますますセキュリティーが重要になっていくと強調した。