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新コンセプト「Peer Motion」でサイロ化されたストレージも連携

節約派ストレージの新ハイエンドモデル「HP P10000 3PAR」

2011年09月02日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)は、データセンター向けの仮想化ストレージの新製品「HP P10000 3PAR Storage System」(以下、HP P10000 3PAR)を発表した。昨年買収した3PARの製品をベースにしており、容量やパフォーマンスを強化しつつ、OSにも多くの新機能を追加した。

 

従来型ストレージに足りなかった要件とは?

 3PARは「ユーティリティストレージ」としてシンプロビジョニングをはじめとしたディスク利用の効率化技術をいち早く導入したベンダー。クラウドを構成するデータセンター向けのストレージで、拡張性や利用効率を向上させる機能が豊富だ。昨年HPの傘下に入り、今回初めてHP 3PARとしての新製品発表となった。

 

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPストレージ事業本部 製品マーケティング部長 宮坂美樹氏

 発表会の冒頭、HPストレージ事業本部 製品マーケティング部長の宮坂美樹氏は昨今、俊敏なITを実現するInstant-On Enterpriseのコンセプトを説明した後、データセンターの基盤となるConverged Infrastracture成長の経緯を振り返った。まずは2009年にサーバー、ストレージ、ネットワークを統合したConverged Infrastractureの要件自体を定義し、2010年にポートフォリオを完成。そして2011年にはよりシンプルに統合化や最適化を推進という段階に進んでいると説明した。そのなかの重要なコンポーネントであるストレージに関しては、7月に「HP Storage」としてリブランディングし、アプリケーション指向とサービス指向という2つに大きく製品群を整備しているが、今回発表した3PAR製品は、仮想化やクラウドを前提としたサービス指向の製品になるという。

 

HPの考える次世代ストレージ

 宮坂氏は、従来型のストレージの課題として、拡張性や運用保守コスト、電力やスペースなどを挙げ、「今までは導入時に可用性や性能にフォーカスしていたが、運用や保守でコストがかかることに対する認識がわれわれベンダーも足りていなかった」と説明。「スモールスタートできる」「自社の人員でストレージを管理可能」「最低限の機器構成で保守料/電力を削減」といった特徴を持った次世代「スケールアウト仮想化ストレージ」を標榜していくと表明した。このスケールアウト仮想化ストレージの代表格が、今回発表されたHP P10000 3PARになる。

 

サイロ化脱却の切り札「Peer Motion」を投入

 次に3PAR製品の詳細について、HPストレージ事業本部 製品マーケティング部の志渡みず絵氏が説明した。

 

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPストレージ事業本部 製品マーケティング部の志渡みず絵氏

 志渡氏は、調査会社のレポートを元に企業の保有データが急激に増大している一方、IT予算が抑制され、管理者が増やせないという課題を指摘。また、サービスプロバイダの課題としては、競争力の強化、予測できないワークロードへの対応、収益向上などが挙げられた。

 

 これに対してHP 3PAR製品は、ユーザー自身が管理できる点が大きいという。志渡氏は、「初期導入だけプロフェッショナルサービスを使っていただければ、運用や設定変更、増設なども行なえる」と説明。ハイエンドストレージでありながら、ユーザー自身が設定できるというメリットをアピールした。

 

ハイエンドストレージでありながらユーザー自身が設定・管理

 もう1つの特徴は、やはり同社が初めて実装したシンプロビジョニング「Thinテクノロジ」だ。ディスクの利用効率を向上させるシンプロビジョニングは、昨今エントリ向けストレージでも導入されている機能だが、他社製品のシンプロビジョニングはプールの事前定義や容量割り当てが必要で、負荷の高いソフトウェア処理をベースにしているという。一方、3PARのThinテクノロジでは、プールは最適化済みなのですぐに利用でき、処理もASICをベースにしたハードウェア処理を行なえる。さらに、未使用のゼロデータを自動的に識別し、再利用するので、高い利用効率を実現するという。

 

他社のシンプロビジョニングとの差別化ポイント

 新製品のHP P10000 3PAR Vクラスは、従来ハイエンドであったTクラスの後継機種にあたるモデルで、ハードウェアやOSなどが大きく刷新された。

 

 まずハードウェア面では、第4世代のASICを搭載し、個数も筐体あたり1つから2つに拡張された。結果としてパフォーマンスは1.5倍、スループットも2.6倍。容量も2倍になり、最大1.6PB(V800)の容量にまで拡張された。前述したゼロデータの検出速度も3倍に拡大し、ディスク利用の効率化がますます充実した。

 また、「ストレージ間の境界を排除する」というPeer Motionという新コンセプトが持ち込まれた。これはシステムごとに個別に用意されていたストレージの課題を解消するもの。ストレージかサイロ化されていると、「仮想化の利用効率が上がらないし、個々のストレージを管理しなければならない。俊敏性にも欠ける」(志渡氏)といった課題が出てくる。この課題を解決するためにPeer Motionでは、複数台のストレージを連携させることで、旧機種から新機種へのアップデートが容易になり、さらにリソース配分やI/Oのワークロードの配分を変更できる。また、高性能なディスクから低コストなディスクへのデータ移行も可能になるという。こうしたフェデレーション可能なストレージは当初3PAR製品のみだが、将来的にはほかのストレージへの移行も可能になるという。

 

初のコンセプトであるフェデレーションストレージ

 さらにソフトウェア面では、最新OS「InForm3.1.1」からVMware vSphere5対応が強化され、SRM(Site Recovery Manager)やVAAI(vStorage API for Array Integration)、VASA(VMware Aware Storage APIs)、Recovery Managerなどとの連携が可能になった。

 

 販売施策としては、Thinテクノロジの実力を体感してもらうため、HP 3PARへの移行により、既存ストレージの容量を半分にすることを保証するというプログラムを実施する。50%削減できなかった場合は、50%を超えた分のHDD費用をHPが負担するという。対象はHP以外のストレージを運用中でかつシンプロビジョニングを未使用であること、容量30TB以上を保有することなどの条件を満たすユーザーになる。

 今回の新製品を見るまでもなく、3PARは今後もクラウド向けの戦略製品として技術革新が進められる。製品名から「LeftHand」が消えたHP P4000 G2と異なり、買収後も製品名に「3PAR」を残していることからもわかるとおり、3PARのブランドの威力は衰えないようだ。

 

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