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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第74回

VAIO Z開発者インタビュー

新VAIO Zを実現した独自性の高いハードの秘密に迫る

2011年08月17日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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VAIO Zのマザーボード。多層片面実装基板はVAIO Xなどでも採用された製造技術の産物

 実際、ZにはXシリーズなどで培われた技術が広範に採用されている、「VAIOの里」こと「安曇野工場でなければ作れないモデル」だ。マザーボードはXシリーズで採用された多層片面実装基板。しかもクロックや熱量が上昇して、より条件の厳しいCore iシリーズでの実装なので、開発には困難を極めたという。だが結果的には、Xシリーズ開発のノウハウを生かして乗り切り、薄型と高性能の両立が実現した。

 では、ラインナップ全体の中で、Z2はどういう位置づけなのだろうか? ご存じのようにZ2は、本体からディスクリート(独立)GPUと光学ドライブ、いくつかの外部インタフェースを取り外し、「Power Media Dock」へと移すことに成功している。バッテリーも内蔵のほかに、長時間駆動時に使う「シートバッテリー」をつけることもできる。結果Z2は、パーツの組み合わせによって、CTOの範囲が非常に広い商品になった。

本体裏面に装着する、シート型のリチャージャブルバッテリー

金森「Zを買われるお客様はパソコンに詳しい人が多いのです。その結果、CTOのメニューで悩まれることも多い。ですから、いろんな仕様を提供したいとは思っており、今回はCTOの範囲を広げることができました」

「Z2のコンセプトは、使用状況に応じて使用する形態を変えられることです。本体とドック、シートバッテリーの有り無しなど、お客様の側で「どのポイントが重要か選べる」。そこが今回の製品で掘り下げたいと考えていた、特徴のひとつです」

本体とドッキングした「Power Media Dock」。VAIO OWNER MADEモデルでは有無を選べる

 他方で、開発側から見ると、また違った視点もあるようだ。

井口「設計から見たこの商品のコンセプトは、『ドックと本体でひとつの商品』です。ただしモバイル機器としての完成度では、ドックなしでも譲りません。スタンドアローンとして必要な拡張性、つまりミニマムな拡張性は保ちつつ、机の上でPower Media Dockとセットにした時に、いかにして拡張性をさらに高められるか、がポイントでした」

「ですので、CTOのバリエーションの広さは、『結果としてそうなった』な面があるのです。ドッキングするスタイルと単体でのモバイルの完成度を目指していたら、その結果バリエーションが増えた、といった方がいいでしょうか」

大変な苦労を承知で光ファイバー採用
パフォーマンスは「実用十分」

 とは言うものの、Power Media Dockという仕組みを実現するには、相当な苦労が必要だ。Z2本体とPower Media Dockの接続には、インテルが「Light Peak」のコード名で開発していた新しい光インターフェースが採用され、これまでコンシューマー用のコンピューターの内部結線としては、まったく使われてこなかった「光ファイバー」がその接続に採用されている。

「この形に至る過程では、やはりLight Peakの存在は大きい」(井口)

井口「Power Media Dockを使ったレイアウトフリーというコンセプトは、光ファイバーを使った細いケーブルで接続できるからこそ成り立っているコンセプトです。リスクをしょって、なんとかかんとか作り上げた、というのが実情でした」

「Z2の開発にかかる以前、次のモバイル製品をチームで検討した際に、『この技術でならできそうだ』ということになりました。いい意味でも悪い意味でも、タイミングが合致した。ニーズとシーズの順番は、『鶏と卵の関係』といったところでしょうか」

「この形に至る過程では、やはりLight Peakの存在は大きいです。光ファイバー以外の接続手段は本格的には検討しなかったので、その場合の実現性はわかりません。しかし少なくとも、これほど細いケーブルにはなり得なかったでしょう」

Z2本体内部に使われている光配線用ケーブル(左)。非常に細くて柔軟な2本の光ファイバーを使っている。写真右は本体内サブ基板側のコネクタ部分

金森「技術自体ができつつあり、すべての環境として整ったタイミングだったと思っています。より薄型化が求められるニーズがあることや、インテルプラットフォームのパフォーマンスが上がってきたタイミングであるなど……。環境的に『今やるしかない』タイミングであったのは間違いありません」

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