多層基板では前代未聞の片面実装
厚みを減らすためにまずやったのは、ミニPCI-Expressのカードを差し込むコネクターを、新規設計することだ。従来は基板の上にコネクターがあり、そこにカードが載る構造となっていたので、積み上げるものが多くなり、厚みが増してしまっていた。そこで基板を切り欠いて、「メイン基板の下に通信モジュールが潜る形」(新木氏)へと変更した。また、VAIO XではWANモジュールも搭載することが決まっていたが、こちらはフルサイズのカードしかないため、面積的にも大きな制約となった。
また同様に、厚さを減らすために採用したのが「片面実装」である。通常、ノートパソコンの基板では、各種部品は基板の両面に実装される。しかし、VAIO Xでは片側にしか載っていない。「両側に部品を搭載すると、どうしても厚くなる」ための配慮だ。しかし他方で、片面実装は意外と難しい技術である。部品の実装面積が純粋に半分になるため、パーツの適切なレイアウトがしづらくなるためだ。また強度を保つという面でも、片面だけに部品が文字どおり「偏って」いるよりも、両面に部品がある方が有利となる。
今回VAIO Xではその難題に挑戦し、薄型化を実現している。マザーボード全体での部品実装後の厚みは、type Pのそれに比べて3割ほど薄くなった。その過程では、長野の「設計部隊」と東京の「企画部隊」が連携することで実現できたことが多いのだが、その話は次週に公開する後編に譲りたい。今回は、あえて1枚の写真だけをご紹介しておこう。
これは、長野テック内にて、VAIO Xの強度評価試験を行なっている最中のものだ。端を持ち、これだけしならせても、VAIO Xは正常に動作を続けている。もちろん、メーカーとして「しならせる」ことを推奨したり、保証したりするものではないが、ヘビーな動作環境でもきちんと動作するよう、強度を保った設計が行なわれている印である。しかも、設計の難しい「片面実装」でだ。
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