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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第97回

死刑は必要? 冷静に考えるためのWeb資料室「刑部」

2011年07月20日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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書き込みが新聞記事のきっかけに?

―― ご自分の足で情報を集めていくと、世の中に出回っている情報とのズレみたいなものを感じることはありますか?

笑月 けっこうありますね。判例集を読んでいくと、それなりの実績がある方の書籍でも、参考にした資料のミスをそのまま載せているケースは多いですね。とくに日付です。判決日の間違いは少ないですが、死刑執行日はずいぶん違うときがあるんですよ。昔の事件ほど執行日が世の中に出回っていないから、間違いがそのまま流通しやすいんです。執行日が死刑がないはずの日曜日の日付になっていたり、2年以上日付を間違えていたり。

 ただ、だからといってそうした書籍を全否定する気はなくて、間違っている部分は訂正されながら出回っていけばいいと思います。私もうっかりミスをそのままアップしてしまって、常連さんから指摘をいただくこともありますし。

オフの日は死刑関連の資料に目を通すという。インタビュー当日も国会図書館で調べ物をした帰りだった


―― 最近はそういう間違いは減っています? 逆に増えています?

笑月 減っていると思います。死刑執行日についても、昭和時代はあまり報道されなかったのが大きいと思います。今はけっこう頻繁に採り上げられるじゃないですか。

 あとは新聞報道にしても、昔に比べて感情的な書き方は少なくなっていると思います。戦後や高度経済成長期の頃は、裏とりもせずに「戦後最大の事件!」みたいな見出しが平気で躍ったりしていましたから(笑)。今は……たとえば、先日死刑確定者が100人に達したときも、3大紙は正確な報道をしていましたし、だいぶ良くなっているのかなと。まあ、徹底して冷静かといったら、そうじゃない部分もありますけどね。


―― 「新聞社さん、ありがとう」で、刑部や「漂白旦那」さんの情報がある種の監視機関の機能を果たしているかもと書かれていましたね。そういう効果を実感することは割とあるんですか?

笑月 んー、それほどのものになっているか私も分からないですけど、つい書いちゃいました(笑)。

 ただ、ふと「新聞社の人が見てくれたのかな」と思ったことはありましたね。山本峰照という元死刑囚(2008年9月執行)なんですけど、彼が控訴を取り下げて死刑確定となったことを、常連さんがウチの掲示板に書いてくれたんですよ。「大阪高裁に係属していないよ」と。つまり、彼に関してはこれ以上裁判する予定はない、どうやらすでに控訴を取り下げているというわけですね。すると、数日後に大手新聞社の記事になっていまして。私のところだけがきっかけではないでしょうけど、見てくれている可能性は高いなと。


―― ちょっと個人サイトの可能性を感じますね。企業という後ろ盾がなくても、確度の高い情報を発信し続けていれば、何かしら社会に影響を与える力が持てるという。

笑月 さすがにそこまでの意識はしてないですけどね(笑)。

 ただ、氏名を伏せて個人で勝手に活動していながらも、それを笠に着ていい加減なことを言うのは非常に恥ずかしいことだと思っているんですよ。匿名でも何でも、人間対人間で誠意のあるつきあいをしたいなと。それを続けていれば、個人サイトであっても社会的にある程度の信頼を得ることもあるのかもしれないですね。そうだったら嬉しいです。

「ひとりごと」コーナーにある「新聞社さん、ありがとう」。笑月氏が日々の情報源としている3大紙のネット版の情報が近年充実してきたことを言及している。その考察として、「新聞社の人達が当方のサイトや漂泊旦那さんのサイトを意識して、こういった情報を詳しく記事にしてくれているのではないかと思ってしまう。もしそうであれば誠に有り難いことである。(ありえないか・・^^;)」と書き添えていた

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