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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第16回

「若者の車離れ」、魔女っ子たちが食い止める?

車のCMではなく、本気のアニメを――スバルの挑戦【前編】

2011年05月21日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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テレビとネットで同じことをやってもダメ


―― たくさんの情報があるので、お客さんもそういう風に適応してしまったのでは。

鈴木 そうでしょうね。それでも、自分で興味を持って見たいと思う看板は確実にある。僕らマーケティングの人間は、お客さんが見たいものとそうでないものの差を考えなければならないだろうなと。

 それで考えると、インターネットをする人たちに顕著なのは、「自分で情報を取りに行く」というところなんですね。僕はよく「ネットは前30度、テレビは後ろ30度のメディア」と言っているんですが、ネットにいるお客さんは、たまたま情報に行き当たるわけではなくて、自分から(前のめりになって)情報を探しに行く方たちなんですね。本当は、ネットにいない方でも自分で情報を探したいと思っているんでしょうけど、情報を探すことが行動として一番出やすいのがインターネットだろうなと。


―― テレビは受動的、ネットは能動的ということですね。

鈴木 そうです。テレビは初めから流れている番組やCMを見ればいいですが、ネットは自分が見たいと思ったものをクリックしにいかないといけない。同じお客さんでも、テレビを見ているときとパソコンの前にいるときでは、CMに対する寛容度も違うんじゃないかと。


―― ネットユーザーは、企業からの「押し付け」が好きじゃないということでしょうか?

鈴木 というより、「企業が自分たちに向けることを前提にしたもの」を望んでないと思うんですよね。ネットは自分が欲しい情報だけを取捨選択して取りにいけるメディアなので、主導権はお客さんにある。逆に言うと、情報をご自身で前向きに取っていただけるので、お客さんのほうから情報を取りたくなるような形や雰囲気などの仕組みを作り出すことが大事なんだろうなと思っています。


―― なるほど。

鈴木 そうなると、まずはお客さんが「見てみたい」と思っていただくことが最も大事だと。それで「プレアデス」も、まず作品として魅力的な面白いものにしようと思ったんです。広告としてのゴールも、お客さんに特定の車を知ってもらうのではなくて、スバル全体の魅力を知ってもらおうというところに設定しました。最終的には「スバルというブランドを好きになってもらえたらいいな」という。なので、もともとこの作品で車を売ろうとか、売れるようになるとは思っていないんですね。


―― アニメに商品を出すことで、ダイレクトに購入に結びつく事例も出てきていますよね。たとえば「けいおん!!」も、放映されたことによってベースやギターが売れたわけですし。

鈴木 いえ、車は高額消費財なので、視聴後にすぐご購入していただけるということはないだろうと思っていました。アニメが購入の最後の一押しになることもあるとは思うんですけど、車はおそらくそうではない。だから今回の広告も、入り口にあたる「ブランドとの出会い」を目指したんですね。

 ブランドというのは、スバルの「世界観」と「名前」ですね。作中でも、主人公の名前などでスバルというフレーズが口の端に乗っていくようにしています。そういったものでお客さんの心の中に楔を打ち込むような形で印象付ける。すると、何かの拍子に「あ、スバルだ」というふうに思い出していただけるのかなと。

 ガイナックスさんも、スバルのイメージをうまく散りばめてくださって。僕でもわからないところまで凝った作品を作ってくれたんですね。

(次ページに続く)

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