注目しているのは、作り手よりも使い手
―― 「IT戦士 岡田有花リンク集」から辿れますが、先の2点以外にも、ネットサービスや作り手のインタビューなどに岡田さんのカラーを感じる記事が多いと思います。上司からの指示以外で、取材対象はどうやって決めているんですか?
岡田 一番最初に考えるのは、「誰が使うか」というところです。「たくさんの人に使われているんだろうな」と思ったり、「たくさんの人に使って欲しいな」と思ったりしたらインタビューに行くというスタンスです。取材でそのサービスに近づこうとしたら、作り手に話を聞くしかないというだけで。もし可能なら、そのサービスのユーザー100人に取材できれば面白いとも思います。
―― 私は「誰がどんな意図でアウトプットしているのか」に興味が引かれますが、逆の方向なんですね。
岡田 やっぱり使い手に興味がありますね。使い手がいなかったらほとんどのサービスは意味がありませんから。記事を書くときも、「自分が書きたい」よりも「みんなが読みたいものを書きたい」が先にくるんです。
たとえば、ニコニコ動画を作った人にインタビューしたいと思うとき、私は「ニコニコ動画をどんな気持ちで作ったか聞きたい」だけじゃなくて、「ニコニコ動画ができた。実際に使ってみて、私も面白いサービスだと思う。みんなに使ってもらいたい」という気持ちになっているんです。だから取材の際も「どう思って作ったか」だけじゃなく、「どういうユーザーが集まって、それによって世界がどう変わるのか」という話が聞きたいんですよ。
―― なるほど。すでに一部で流行っているものをより多くの人に紹介したり、皆が便利になる潜在能力があるサービスを採りあげて知ってもらいたい、というスタンスですね。業界全体でSecondLifeをプッシュしているときに、「現状じゃ厳しいじゃん」とサラリと書けるのも頷けます(笑)。
岡田 (笑)。そういう「これを商業的に盛り上げようぜ」という作為的な風潮が嫌いなんですよね。インターネットの逆側にあるじゃないですか。SecondLifeは、サービス自体すごく面白いものだとは思ったんですけど、あまりにユーザーがいないことに気づいて、実際使ってみてもみんなが使うにはハードルが高いと感じたんですよ。なら、そこを正直に伝えるべきかなと。
最近だと、Facebookも当時のSecondLifeと似たような状況にあると思います。個人的にFacebookは、友人が早くから参加していることもあってバリバリ活用しまくっているんですが、その面白さが一般まで浸透するかはまだ見えません。機能的にはすごいと思うんですけど。やっぱり「これ面白い」だけじゃなく、「定着しそうだぞ」という感触もないとダメですね。
―― ちなみに、2003年以降でもっとも印象的だったネットの事象は何ですか?
岡田 ニコニコ動画で初音ミクが流行ったことですね。初音ミクという、キャラクターを付けた楽器がもの凄くヒットして、ハイクオリティな楽曲がニコニコ動画にアップされただけでなく、「MikuMikuDance」に代表される3Dの初音ミクを動かしたアニメPVまで出てきたじゃないですか。ああいう予想もしていない現象がユーザーから自発的に生まれてきたのは本当に感動しましたね。その場に立ち会えて本当に楽しかったです。
ただ、私が追い切れていないだけで、そういう興奮はほかにもあったと思うんですよね。何かサービスが始まって、人に使ってもらっているうちに想像もしないような面白いことが始まるという。たとえば、余裕が一切なくて観察できませんでしたが、私が入社した頃はブログもそういう勢いがあったと思うんですよね。今後は何か流行るのか分からないですけど、個人的にもウォッチを続けていくと思います。
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