このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

日本の企業を変える!最新SaaS導入事例 第5回

顧客にも導入を勧める元祖SaaSのパワーとは

案件管理に悩むコンサル会社を救ったSalesforce.com

2011年03月03日 09時00分更新

文● 金子拓郎/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

カスタマイズにワークフロー、マーケティング
要望を満たすサービスはセールスフォースのみ

 CRM導入の目的の1つは、ワークフローにより、紙での申請や報告を削減し意思決定までの時間を削減することだ。加えて、マーケティングにも使えることも重要だった。顧客履歴をすべて残して次のマーケティング戦略に活かす、顧客情報を自動的に可視化することで、KPI(Key Performance Indicator)の把握と改善点を見いだす、コンサルタントの活動やノウハウの共有を可能にするなどだ。

 しかし、製品選びの条件にはそれ以外もあった。セールスフォースのサービス導入を提案したのは、同社コンサルタントの今野洋之氏だ。今野氏は、CRMは製造業や卸売り向けのもので、自分たちに適したシステムがあるとは思っていなかったのだという。そのため、条件の1つはカスタマイズの機能があることになった。

フィナンシャル・インスティチュート コンサルタントの今野洋之氏。Salesforce CRM導入の音頭をとった一人だ

 そしてもう1つ、システム部門を持たないため、自社にサーバーを構築し管理者を雇って運用をしていくのではなくサーバー管理をアウトソース可能なことも求められていた。そのため、自社で運用するオンプレミス型ではなく、SaaS型のCRMを選ぶことになった。

 そこで、今野氏はそのころ開催していたIT関連の展示会に赴いた。ところが、中小企業向けのブースを見たところ、会社全体の経営をカバーするサービスではなく、在庫管理や勤怠管理のサービスばかり。そのような中、唯一、同社が求める条件を満たすのがSalesforce CRMだったという。

 そこで、2001年1月にセールスフォースの営業担当者にプレゼンをしてもらったところ、社長の川北氏の判断でスピーディに導入が決まった。川北氏によれば、「おぼろげながら、こういう機能があったらいいなと思っていた、その機能を備えるのがSalesforce CRMだった」という。セールスフォースの営業担当者には「一晩考えます」と答えた川北氏だが、実際は即決だったとのことだ。

トップの率先で定着化へ

 2009年1月にSalesforce CRM導入を決定し、稼働を開始したのは5月のことだった。

 企業に新しいシステムを導入したあとに発生する課題の1つは、従業員への新システムの定着化だ。「Webグループウェアを導入したのに、誰も使ってくれなかった」というのは、よく聞く話だ。フィナンシャル・インスティチュートでも、たとえばコンサルタントが日報をSalesforce上で付けてくれなければ、迅速な回覧など行なえない。

 定着化の推進を行なったのは、社長の川北氏だった。まず自身が積極的に使うことで、「社長が使っているのだから自分たちも使わなければ」という雰囲気を作り出した。さらに、顧客と面談を行なったコンサルタントはSalesforce上で面談記録を付けないと成果報酬を払わない、交通費もSalesforce上での申請を必須とするなど、「使わざるを得ない状況」も作り出したのだ。

 ただし、導入後の問題は、ほかにもある。定着化により、新しい情報は担当者が自分たちで登録するようになったが、過去の情報は改めて登録する必要がある。この移行作業は川北氏が自ら行ない、なんと8カ月もかかったという。登録する情報の解釈が違ってしまうと、情報がぶれてしまうため、過去の状況をきちんと把握している社長本人が作業する必要があったのだ。

定表。3つのフェーズに分けて、徐々に導入を進めている" />

フィナンシャル・インスティチュートの導入予定表。3つのフェーズに分けて、徐々に導入を進めていることがわかる

顧客獲得率の上昇と事務作業のコスト削減

 導入後の作業に手間のかかったSalesforce CRMだが、その効果はどうだったのだろうか。

 まず、顧客とのコンタクト履歴や顧客別属性など8000を超える情報のデータ化、レポート化により、次の戦略立案が可能になったという。さらに、見込み客が実際に顧客になる確率が1.6倍になった。これまで、メールや電話などで問い合わせが来たが、契約までたどり着かなかった率は12%弱だった。それが、Salesforce導入後には、9%にまで低下した。つまり、顧客になる率が3ポイント上昇したことになる。

 また、請求書発行から売掛金回収にいたる総務処理を半自動化でき、その状況がリアルタイムに全社員に共有化された。さらに、案件別の進捗情報やコメントのやり取りも可能になったという。この、Salesforceによって省力化できた事務作業は、事務職員およそ2名分と見積もった。つまり、人件費として月間40万円以上を削減できている公算だという。

 フィナンシャル・インスティチュートの業務を改善したSalesforce CRMだが、これは顧客である中小企業の業務改善にも役に立つ。そのため同社では、Salesforce CRMの導入を積極的に勧めている。それも、導入してはどうですか?」ではなく、「導入しないとダメです」と伝えているという。

カスタマープロファイル

組織名:株式会社フィナンシャル・インスティチュート
業種:コンサルティング
代表取締役:川北 英貴
地域:東京都
創立:2004年8月(平成16年)
従業員:55名(2010年8月現在)
Webサイトhttp://www.financial-i.co.jp/index.html


前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事