このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

日本の企業を変える!最新SaaS導入事例 第2回

低廉なSaaS導入で顧客の満足度を大幅アップ

地元密着型の広告会社を劇的に変えた富士通のCRMate

2011年02月28日 08時50分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

現場の社員が導入を決定
「頭にある」案件をSaaSで管理

 富士通のCRMateは商談や問い合わせの管理を実現するCRMアプリケーションで、手作業で行なっている情報収集や統計作業をシステム化できる。プログラミングなしで、オリジナルの入力画面を作成できるので、既存の伝票で起票していた内容をデータベース化することが可能だ。提供はSaaS形態で、ライト版であれば30ユーザーの場合1ユーザー700円/月で利用できる。

従来は案件が紙の伝票に登録されていた

 コンパスが抱える大きな課題として、納期と顧客の管理が挙げられる。顧客や案件は紙の伝票に登録され、掲示板で共有されていたが、「月200件くらいの案件が営業の頭の中で回っており、いつ校正を出すかなどのスケジュールは感覚で管理されていました。そのため、カレンダーや年賀状の時期にも適切なご案内が提供できない状態でした」ということで、やはり個人事業者の限界が露呈した形。そこで、顧客と案件管理のため、導入したのがCRMateというわけだ。

 CRMateは、もともと藤岡氏が専務として所属しているマーフィードという会社で使っていたもの。これをコンパスでも活用できないかと考えたのが、導入の発端である。面白いのは、導入の決定や運用に際して、藤岡氏が一切関わっていないところだ。そもそも導入するのか、導入したらどのように運用するのかなどは、あくまで営業や制作を担当する現場の社員が決めたという。デザイナー/コーディネーターの福井哲也氏は「営業が『このお客さん、前にどんなもの作ったっけ』と外出先から連絡が入った場合、今までは作業を止めて、伝票を探さなければならなかたんです。その時間のロスは大きいので、なにか解決できる手段がないかなと探していたら、CRMateという選択肢があったんです」と語った。

デザイナー/コーディネーターの福井哲也氏

 そして制作や営業、コーディネーターなど社員と富士通の営業がディスカッションを重ね、社内で試用を行なった。結果として、今まで使っていた紙ベースの伝票をCRMateでテンプレート化することで顧客と案件を管理することになった。具体的には、顧客の基本情報はもちろん、制作の進捗状況や顧客の特徴などを登録するようにした。

 この結果、たとえば納品物にどんな加工を行なったか、過去に納期で迷惑をかけてないかなどをCRMateからいち早く把握できるようになった。また、長期的な仕掛かり案件もきちんと管理することが可能になったという。「たとえば、DMやチラシのように納期がある仕事ではなく、ホームページを作りたいとか、会社案内を更新したいとか、看板を直したいが急がないという案件もあるんです」(藤岡氏)。こうした内容が紙で管理されていると、おのずと忘れ去られていくことになるが、CRMateを使うことできちんと商談履歴として残しておけるわけだ。その他、案件ごとの作業のステータス、顧客からの問い合わせの対応、さらには過去の傾向を見てよりアクティブな営業まで可能になったという。まさに効果は絶大だったわけだ。

SaaSで敷居が下がったから導入できた

 最初はいちいち入力することにも抵抗があったが、今ではCRMateを入力するということがきちんと根付いてきた。取締役 営業部長 吉竹孝二氏は「電話やFAX、メールなどいろんな手段で仕事を受けますので、まずはすべてをCRMateに入力してはじめるというルールにしています」ということで、社内の情報共有が促進され、風通しのよいコミュニケーションが実現した。

取締役 営業部長 吉竹孝二氏

 SaaSという利用形態も中小企業のIT導入に大きく貢献するという。「これくらいの規模の会社で役立つシステムを導入しようと思うと、100万円くらいでサーバーなどを買って、アイデアと情熱をかけなければなりません。ですが、CRMateのようなサービスを出してくれたおかげで、導入の敷居がぐっと下がったように思います」(藤岡氏)と富士通のSaaSに関して高く評価している。また、SaaSということで、場所や時間を問わずに使えるのも大きなメリット。外出先からCRMateをチェックし、仕事を発注してくれた企業にいち早く電話するなど、きめ細かな対応が可能になったとのことだ。

 もちろん、一部改良への希望もある。経営者としての藤岡氏としては、やはり請求書等の金額も連携させてほしいというニーズがある。また、制作側の福井氏としては、既存のシートを再利用したいという使い勝手の向上が希望だ。こうしたユーザーのニーズは逐一CRMateに反映されている。使っているうちにどんどん進化していくのもSaaSのメリットだ。

 藤岡氏はCRMateの導入効果を「オーナーが皮算用でやっている個人事業主から、個人に依存しない組織としての中小企業に向かうステップとして非常に大きかったと思います」と説明してくれた。たった1つのITアプリケーションが業務の効率化や社員のマインド、ひいては経営にまで大きな影響を与えている好例といえよう。

カスタマープロファイル

組織名:株式会社コンパス
業種:広告代理店
代表取締役:藤岡 秀和
地域:神奈川県
創立:1997年12月(平成9年)
従業員:5名(2011年1月現在)
Webサイトhttp://www.e-compass.ne.jp/


■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事