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富士通フォーラム2010開催

一気通貫のクラウドに強み──富士通山本社長

2010年05月17日 06時00分更新

文● 花茂未来/インサイトイメージ

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5月13日、「富士通フォーラム 2010」が開催された。“ICTが切り開く未来”をテーマに執行役員社長の山本 正已氏が基調講演を行い、ICTとPC活用による社会貢献や生活支援にいたるまで、同社の様々な取り組みを紹介するとともに、それに関する数多くの展示物が公開された。

 「ICTにはビジネス、暮らし、社会を変える力がある」という一言で始まった執行役員社長、山本 正已氏の基調講演は“ICTが切り開く未来”をテーマにしたもの。ICTによる企業経営、ひいては社会全体に価値をもたらしていくことを今後10年間の企業課題として掲げた。

執行役員社長の山本 正已氏

 21世紀に入り、人々が考える豊かさは、より健康・安全・地球環境と共存した将来への安心へと変わってきている。そうした人々の願いに富士通は人の本質的価値を追求し、豊かに生きていくことを支援する「クオリティ・オブ・ライフ」に貢献することで、ICTの自活用とコンピューターサイエンスによるインテリジェントな社会を目指すという。

 富士通が掲げるこの社会と人々の豊かな未来を目指す「shaping tomorrow with you」が基調講演の根幹にあるものであり、展示会のメインテーマとなっている。


現在のICTの課題

 昨今のICTにおいて、ハードウェアは低価格化したが、逆にシステム構築・運用面は複雑化している。また、24時間365日体制の保守に加えセキュリティーなど求められるものはさらに高度になっている。

ICT基盤の現実と理想

 実際、ICTの維持・運用に関するコストは企業のICT費用全体の60%以上に上るといわれている。しかし、そうした「運用コストを圧縮し、新規の戦略的ICT投資を40~50%に引き上げることが理想である」と山本氏は語る。

 こうした課題をクラウドやSaaS型サービスにより解決することで、「システム構築・運用にかかっている人的・金銭的リソースを新たなシステム開発に投入し、企業の競争力を高めることがクラウドの可能性である」とした。


富士通のクラウドは一気通貫が強み

 富士通が提供するものはクラウドコンピューティングではなく、企業が安心して利用できる、セキュアで信頼性の高いクラウド“サービス”であることを強調。そのサービスの核として、長年培ってきたサービス事業、クラウド事業の技術を融合した信頼性の高いクラウドサービス基盤「トラステッドサービスプラットフォーム」を提供していくとする。

 トラステッドサービスプラットフォームとは、システムリソース、ネットワーク、セキュリティ、マネジメントサービスからなる大規模仮想化プラットフォームのこと。既に富士通はこれらをSaaS、PaaS、IaaSといった多彩形態での提供を行っており、ユーザーの希望に沿ったサービスを展開できる。

 つまり、富士通の強みは「これまでの構築・運用ノウハウとプロダクトからネットワークに至る一気通貫の総合力」であり、「実績と総合力の2つでユーザーの既存システムとクラウドを最適にインテグレーションできる唯一のメーカーだ」と断言したのだ。

「トラステッドサービスプラットフォーム」の概要

富士通の強みは一気通貫であること


「FNEICS Ⅱ ユニバーサルコネクトM2M」で
ワークスタイルの多様化に対応する

 ICT基盤の構築に欠かせない要因が、昨今のブロードバンドの進展による様々な端末を用いたワークスタイルの多様化だ。すでに富士通は、企業の専用ネットワーク網に加え、インターネットや次世代ネットワークを提供するマルチキャリアネットワークサービス「FNEICS Ⅱ」を提供している。しかし、今回は多くの先行商談や実践を元に、利益の見える化や新端末に対応する新ネットワークサービス群「FNEICS Ⅱ ユニバーサルコネクトM2M」の提供を開始した。

「FNEICS Ⅱ ユニバーサルコネクトM2M」

 これはFNEICS Ⅱとクラウド基盤を連携させたマシン・ツー・マシンのリモート監視サービスだ。工作機械やトラックの車載機に通信モジュールを搭載することで位置情報や稼動情報を収集して業務支援に役立てていくことが可能となる。

 そして、このサービスをグローバルに展開していくために、海外に積極的にデータセンターを設置しているという。国内には90拠点、海外では48拠点に設置し、26ヵ国でのサポートを行っているが、さらに本年度中にFNEICS Ⅱ ユニバーサルコネクトM2Mのプラットフォームをアメリカ、イギリス、ドイツ、シンガポール、オーストラリアの海外5拠点にも強化していく計画だ。こうした取り組みで、企業の事業をグローバルにサポートしていくことも明らかにした。

データセンターを中核に、世界共通のサービスを提供


価値創造型のICT基盤「ハイブリットクラウド」

 日本におけるクラウドサービスの代表格として、富士通の次世代IDCを支える館林システムセンターは世界最高水準でセキュリティー格付けで国内初のトリプルAを獲得した。このデータセンター内には約1000台のサーバーが集約されているが順次拡張していき、ユーザー企業のプライベートクラウド環境をさらに充実化して提供するという。

 また、センター全体の消費電力低減や太陽光発電の導入など、徹底したグリーンファシリティを実現していることもアピール。「このセンターを用いて、企業システムの様々な効率化を実現する。さらに、プライベートクラウドがパブリッククラウドと融合することで、ユーザー企業のビジネスそのもの、そして社会システムを変革する役割を担っている。こうして、ユーザー企業とともに新しいビジネスを創造する価値創造型のICT基盤が富士通が、考える新コンセプト“ハイブリットクラウドインテグレーション”だ」と山本氏は語った。

富士通の次世代IDCを支える館林システムセンター

富士通が目指す価値創造型のICT基盤


クラウド化の先にある新たなイノベーション

 クラウド化が進展すれば、最新のシステム環境やニーズへの対応が新たな課題として生まれ、経営者は企業の変革を望む。一方で、企業人ではなく人間として快適で豊かな生活を望んでいる。これはビジネスと社会のイノベーションが求められているものだという考えを披露した。

 ブロードバンドの普及によるネットワークセントリックな時代の中で、人はコンピューターに使われるものになってしまった。しかし、クラウド化により様々なサービスが生まれ、ある意味でシステムをブラックボックス化し、技術中心のICTやコンピューターの世界を人中心に変えていくものになりえる。

 現在、ネットワーク上には様々な端末からの情報が飛び交っているが、こうした情報をクラウド基盤の上に蓄積し、その蓄積された膨大な情報を価値あるサービスに転換していき、人々がより豊かな生活をおくれるようにする「ヒューマンセントリックインテリジェント」という独自ビジョンをもち、「今後10年間を費やしてこのビジョンを追求していく」と山本氏は強く主張した。

蓄積された情報を価値あるサービスに転換する実践知の仕組み

 たとえば、料金メーターや工場などの工作機の状況をネットワーク経由で把握したり、運輸業と連携した効率的な運用を目指す。そのほか、ゲームやメディア、医療などさまざまな分野と連携していく。

 また、開発中の次世代スーパーコンピューターの10ぺタフロップスという高度な演算技術を用いて、時間のかかる医療データの演算や、気象データ演算を即座に行い、人々に還元できるともしている。

 富士通はこうした今回のフォーラムで、ICTとクラウドを利用した次世代の社会貢献へ目指し、取り組んでいることを表明した。それは展示会において、すでに実際に開発・研究に取り組んでいる成果を展示することでも証明している。次ページでは、そうした富士通の取り組みのなかから、興味深いものを紹介していきたい。

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