今回は久々のAMD GPUロードマップである。前回紹介したのは2009年9月の第18回なので、15ヵ月ほどのギャップがある。また、前回はまだRadeon HD 5000系列さえ発表前という時期であり、推定がかなり入ったものだった。まずは、これを正しいものに置き換えて説明するところから始めたい。
2009年後半に登場した
Evergreen世代のRadeon HD 5000シリーズ
まず2009年9月に、コード名「Cypress」こと「Radeon HD 5870」がリリースされる。これが「Evergreen」世代最初の製品である。AMDはこの世代から、従来の「Rxxx/RVxxx」のコード名を使わなくなりつつあった。といっても、Evergreen世代ではまだRVxxxが混在しており、Cypressは「RV870」に相当する。
このRadeon HD 5870の一部シェーダーを無効化するとともに、動作周波数をやや引き下げたのが「Radeon HD 5850」。さらに一部シェーダーの無効化を行なったうえで、性能が下がりすぎたのを補正するためか、やや動作周波数を引き上げたのが「Radeon HD 5830」となる。このRadeon HD 5830のみは、やや遅れて翌2010年2月の発表となった。
また、Radeon HD 5870のコア2つとPCI Expressスイッチを1枚のカード上に搭載した「Radeon HD 5970」(コード名 Hemlock)が2009年11月に発表された。だが、流石に消費電力が大きすぎたため、動作周波数をやや落としての登場となっている。
このCypressをほぼ半分にして、その分ダイサイズを縮小した「Juniper」(RV840)コアが、2009年10月に「Radeon HD 5770/5750」として発表された。シェーダー類がきっちり半分な分、メモリーバスも半分となっており、性能的にもちょうど半分といったところだ。
さらにこの下のグレードとして、2010年1月に発表されたのが「Redwood」(RV830)コアの「Radeon HD 5670」と、これの動作周波数を下げた「Radeon HD 5570/5550」である。意外にも、「Radeon HD 5650」という型番はデスクトップでは欠番となり、代わりに5570/5550という番号を当てている(モバイル向けにはMobility Radeon HD 5650が存在する)。
5670/5570/5550では、シェーダー数は同じである。このクラスになると動作周波数を変えるだけで性能が変えられるし、ダイサイズも小さい。例えば、Cypressのダイサイズが334mm2なのに対し、Redwoodは104mm2しかない。ちなみにJuniperは170mm2、後述のCedarは59mm2である。「一部シェーダーに欠陥があるコアの救済」のために、シェーダー数を減らしたモデルを作ることで、製品歩留まりを改善するといった対処も必要だからであろう。
5000番台のローエンド製品は、2010年2月にリリースされた「Cedar」コアの「Radeon HD 5450」である。性能的には間違いなくローエンドで、メモリーバスも64bit幅しかない構成だが、価格が安くて消費電力も少なく、ロープロファイルサイズのカードにも対応できるといったメリットも大きい(関連記事)。しかもDirectX 11フル対応といった特徴もあり、それなりに売れている。

この連載の記事
- 第668回 メモリーに演算ユニットを実装するSK HynixのGDDR6-AiM AIプロセッサーの昨今
- 第667回 HPですら実現できなかったメモリスタをあっさり実用化したベンチャー企業TetraMem AIプロセッサーの昨今
- 第666回 CPU黒歴史 思い付きで投入したものの市場を引っ掻き回すだけで終わったQuark
- 第665回 Windowsの顔認証などで利用されているインテルの推論向けコプロセッサー「GNA」 AIプロセッサーの昨今
- 第664回 Zen 3+で性能/消費電力比を向上させたRyzen Pro 6000 Mobileシリーズを投入 AMD CPUロードマップ
- 第663回 Hopper GH100 GPUは第4世代NVLinkを18本搭載 NVIDIA GPUロードマップ
- 第662回 グラボの電源コネクターが変わる? 大電力に対応する新規格「12VHPWR」
- 第661回 HopperはHBM3を6つ搭載するお化けチップ NVIDIA GPUロードマップ
- 第660回 第3世代EPYCは3次キャッシュを積層してもさほど原価率は上がらない AMD CPUロードマップ
- 第659回 ISSCC 2022で明らかになったZen 3コアと3D V-Cacheの詳細 AMD CPUロードマップ
- 第658回 人間の脳を超える能力のシステム構築を本気で目指すGood computer AIプロセッサーの昨今
- この連載の一覧へ