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日立ストレージ製品の生まれ故郷を訪ねる【後編】

仮想化を追い求め続けた日立ストレージの昔と今

2011年01月11日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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仮想化を追い続けた日立ストレージに新製品

 さて、同社が従来から追い続けている技術がご存じ「仮想化」である。「サーバーは仮想化されてきていますが、今後はストレージリソースをプール化し、必要な分を必要な量だけ取り出せるようにするストレージ仮想化が拡大していきます」(大枝氏)という。

日立のストレージ仮想化技術への取り組み

 もとより日立は、RAIDという物理ディスクの仮想化からスタートし、筐体やホストインターフェイスの仮想化も進めてきた。2004年には他社も含めた異機種ストレージを統合し、ストレージデバイスの仮想化を実現する「Hitachi Universal Volume Manager」、2007年にはシンプロビジョニングによるボリューム容量の仮想化を実現する「Hitachi Dynamic Provisioning」を投入。そして、2010年9月に発表された新エンタープライズストレージであるHitachi Virtual Storage Platform(以下、VSP)に導入されたのが、自動階層管理が可能なストレージ階層の仮想化機能である「Hitachi Dynamic Tiering」だ。これはデータのアクセス頻度にあわせて、異なる媒体にデータを再配置する機能である。「SSD、SASディスク、SATAディスクという特性の異なる媒体にデータの保存場所を動的に変えることで、パフォーマンスを最適化します」(大枝氏)とのこと。

ストレージ階層の仮想化機能「Hitachi Dynamic Tiering」

 また、VSPでは「3Dスケーリング構造」を採用し、性能と容量を増やすスケールアップ、コントローラーを連結しシステムを2倍に拡張するスケールアウト、そして既存システムを最大255PBまで仮想化統合するスケールディープという3方向の拡張が可能になっている。スケールアウトに関しても、単に2ノードを接続するだけではない。「日立のエンタープライズストレージでは独自のクロスバースイッチのアーキテクチャを採用しており、同一ノード内であればどのディスクからも同じレイテンシを実現しているのですが、今回は異なるコントローラーのノードをまたいでも性能が落ちないようになっています」(大枝氏)という。そして、こうした重い負荷に耐えるようハードウェアも底上げされ、従来機に比べてコントローラーの処理能力自体を大幅に向上させている。

 そしてもう1つの新たな試みが、「Hitachi Virtual File Platform」で実現するファイルサーバーの仮想化だ。こちらは10月に発表された製品で、ゲートウェイを介してファイルサーバーの仮想化を実現するもの。まずは容量の拡張性や性能面を既存のNASに比べて大幅に高めており、2011年の2月にはWAN越しでデータセンターのストレージに集約化するための自動化・仮想化機能が追加される。「今まで個別で管理してきたファイルをデータセンターで一元管理できるようにして、コストを下げます」(大枝氏)。これにより、ユーザーはローカルか、クラウドか、物理的なファイルの位置を意識せず、コンテンツを扱えるようになる。

クラウド対応ファイル仮想化機能

 「Data Drives Our World and Information Is The New Currency」(データは世界を動かす そして、情報は新しい価値を生み出す)」という新しいビジョンを打ち出し、9・10月でエンタープライズストレージ、ファイルストレージという新製品発表を行なった日立のRAIDシステム事業部。「お客様の環境がどんどん変わってきているので、私たちもそれにきちんと対応していきます」(大枝氏)とのことで、過去のビジネスに拘泥することなく、つねに革新を続けていく姿勢が、単なる情報の保存庫にとどまらない、ストレージの新しい価値を創造している理由だと感じた。

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