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データ爆発に対応するコンテンツクラウドがSMBでも!

Cloud on-Rampをよりお手頃に!日立のエントリNAS「VFP50」

2011年11月04日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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非構造化データの効率的な管理を実現するNASが、昨年日立製作所(以下、日立)が発表した「Hitachi Virtual File Platform(以下、VFP)」である。100万円を切る戦略製品「VFP50」を中心に、製品の魅力を紹介する。

NAS製品差別化の切り札「Cloud on-Ramp」とは?

 オフィスファイルや画像などのデータは近年爆発的に増える傾向にある。ある調査会社の調べによるとデータタイプごとのディスク利用容量を調べると非構造化データやコンテンツデポと呼ばれる非構造化データは、年平均成長率で約60%に達している。また、震災の影響でデータ保護が重要なタスクとして認識されるようになったほか、今まで破棄していた大量データをより活用することでビジネスに役立てようという「ビッグデータ」というトレンドも存在している。こうした増加する非構造化データを安全に保管・効率的に活用するためのインフラとして、ファイルサーバー専用機であるNASに大きな注目が集まっている。

 こうしたファイル管理の課題に目を付けたベンダーの1つが日立だ。日立はストレージとクラウドを使って、各拠点のデータをデータセンターで一元的に管理し、運用管理を効率化する「コンテンツクラウド」という構想を持っている。こうした構想を実現するための重要なストレージ製品がVFPというわけだ。日立製作所 情報・通信システム社 統合プラットフォーム販売推進本部の馬場政彰氏は、「データの属性や種類を意識せずに知識・活用できる基盤をコンテンツクラウドと定義しており、今まで個別のNASやファイルサーバーで管理していたデータを集約して管理します。ファイルストレージがその中心を担っています」と説明する。

日立製作所 情報・通信システム社 統合プラットフォーム販売推進本部 販売戦略部 部長 馬場政彰氏

 この日立の戦略を実現するための製品がVFPである。まず、コンテンツクラウドでのデータ集約・統合化のため、ファイルサイズが従来製品の60倍となる最大1PBという拡張性を確保した。仮想化によりディスクをプール化することで容量拡張も容易に行なえるようになっており、長期間の業務停止不要なオンラインデータ移行も可能だ。さらに、VFPではCIFSやNFSなどのファイル共有だけではなく、FCやiSCSIなどのSANプロトコルまで統合したユニファイドストレージとして展開できる。

 ただ、正直ここまでであれば、従来他社のNAS製品でも実現されていた機能だ。馬場氏は、「信頼性に関しては絶対の自信があるのですが、他社製品との差別化に苦労したのも事実です。NAS単体の勝負ではなく、NASを越える使い方を提案したいと考えていました」と語る。そこでVFPに盛り込まれたのが、コンテンツクラウドを具現化する「Cloud on-Ramp(クラウドへの入り口)」だ。これはWANを介して、データセンターへデータを自動集約する機能。ユーザーは通常通りVFPをファイルサーバーとして利用していれば、バックエンドでバックアップ/アーカイブ用のHCP(Hitachi Content Platform)というファイルストレージにデータ転送されるという仕掛けだ。いわばクラウド越しの階層化管理機能といえる。

 日立製作所 情報・通信システム社 RAIDシステム事業部 事業戦略室 真田明美氏は、「単なるNASではない製品を作ろうというのが、VFPとCloud on-Ramp開発の背景です。拠点にVFPを置いてもらって、自動的にセンターにバックアップし、管理を効率化できます。その他の仮想化対応や設定の容易さなど、NASに加えた価値を提供するのがVFPになります」と説明する。

日立製作所 情報通信システム社 RAIDシステム事業部 事業企画本部 事業戦略室 室長 真田明美氏

100万円を切るエントリモデル「VFP50」でSMBに切り込む

コンパクトな筐体を採用した低価格モデル「VFP50」

 とはいえ、SANストレージでの高いシェアに比して、日立のNASのシェアは決して高くないという。これを「ストレージ全体は横ばいなのですが、NASの市場は伸びています。2013年までに垂直立ち上げし、このNASの市場シェアを一気に15%まで拡大していきたいんです」(馬場氏)というのが日立の目指すところだ。これを実現するための戦略製品となるのが、2011年9月に発表された「VFP50」である。

 VFP50は、タワー型のコンパクトな筐体に上位機種と同じファイル共有の機能を盛り込んだエントリモデル。まず注目したいのは、100万円を切る価格だ。最大8TBと容量に制限はあるものの、「今までエントリモデルでも定価が800万円台だったので、100万円を切るのは弊社としては相当思い切った値付けです」(馬場氏)だ。導入もきわめて容易で、結線・電源投入後、システム設定ウィザードからライセンスキーやネットワーク、時刻などを設定し、ファイル共有の詳細を決めればOK。実際にデモを見てきたが、10分で設定まで完了するというのは嘘ではない。

導入の敷居を下げるGUIのウィザード

 もちろん、Cloud on-Rampの機能をそのまま利用できるので、VFPからHCPへの自動バックアップ、アーカイブ、DRなどが可能。コスト的にHCPの導入が難しいSMBのニーズを踏まえ、高い信頼性・可用性を誇る日立のデータセンターへのクラウドバックアップもサービスとして用意した。真田氏は、「震災以降、拠点にデータを預けておくと危ないというお客様の声も出ました。そこで思い切って価格を下げ、バックアップを身近にしてもらおうと思いました」と、VFP50の位置づけをこう説明する。

 今後はラインナップも拡充し、ユーザーに対して選択肢を与えていく予定。11月にはVFP50の上位機種にあたるVFP70も投入する。戦略製品と位置づけたVFP50が、同社にとって未開拓のSMB市場でどのように響くのか、興味深いところだ。

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