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パブリッククラウドへの橋頭堡を築く

Cisco UCSで学内クラウドを構築した近畿大学

2010年11月02日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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近畿大学は2010年4月に開設された総合社会学部の学内クラウドの基盤として、Cisco Unified Computing System(以下、Cisco UCS)を導入した。真 新しいCisco UCSを導入した背景には、パブリッククラウドへの移行を見据えた決断があったようだ。

総合社会学部の新ITインフラをCisco UCSが支える

総合情報システム部教育システム課 課長代理 矢藤邦治氏

 近畿大学は80年あまりの歴史を持つ私立大学で、大阪を中心に、奈良、和歌山、広島、福岡などに12の学部、1つの専門職大学院、11の大学院、2つの短期大学、20の研究所等・附属高校等を擁する。大学全体の在籍者は3万人を超え、高等学校以下、通信教育部までをあわせると実に5万人近い大所帯になる。最近の研究テーマとしては、「水産研究所が行なった世界初のクロマグロの完全養殖や、コーヒーやお茶のカスから作った固形燃料であるバイオコークスなどがよく知られています」(総合情報システム部教育システム課 課長代理 矢藤邦治氏)という。

 そして同学が2010年4月に12番目の学部として開設したのが、「総合社会学部」である。総合社会学部は「新しい社会システムに貢献できる人材」の育成を目指し、社会・マスメディア、心理、環境などにまたがるカリキュラムを持つ学部だ。この総合社会学部の設立とともに構築されたのが、Cisco UCSをベースにした学内クラウドである。

 Cisco UCSによる学内クラウド導入の背景には、学内でのITシステムの分散という課題があった。近畿大学では総合情報システム部が管轄する「KUDOS(情報処理教育棟)」だけでなく、学部や学科が独自にITシステムの導入を行なってきた。しかし、学内にサーバーが散在すると管理が行き届かなくなり、拡張時には設置スペースや電力も新たに確保する必要がでてくる。また、サーバー1台につき1つのアプリケーションを動作させるパターンでは、導入に時間もかかるし、余剰リソースを他で活用することもできない。もちろん、アプリケーションが増えるたびにサーバーを追加しなければならなかった。

 こうした状況を打開するため、将来的なシステム統合を見越して検討されたのが、学内クラウドだ。10年という長期の投資期間を設定し、省スペース・省電力なブレードサーバーを用いた仮想サーバー環境を構築。これをベースに、総合社会学部の学生向けのコンピューティング環境と、その余剰リソースを研究用のサーバー向けに活用させるという計画である。

ネットワーク志向のCisco UCSに将来のクラウドの姿を見る

 こうした学内クラウドの製品選定において、汎用のx86ブレードサーバー導入を検討した。だが、シスコシステムズのサーバー製品であるCisco UCSが2009年にリリースされるとの一報を知り、さっそく導入の検討を開始したという。

 Cisco UCSは、ネットワーク機器の最大手であるシスコのサーバー市場進出として話題になった製品で、仮想化された統合コンピューティング環境を提供するデータセンター向けのソリューション。具体的には、x86ベースのサーバーをデータセンター向けのスイッチで接続し、巨大なリソースプールを作り上げたものだ。これにより、配線や消費電力の削減、スピーディな導入、管理の効率化などを実現する。

Cisco UCSの製品群

 では、なぜ実績もなく、発売されたばかりのCisco UCSを導入したのか? 「いろいろな方から、なぜ導入したのかよく聞かれますが、逆になぜ導入しないんですかと聞きたいくらいです。もちろん総合社会学部という新しい学部を作るわけですから、なにか新しいことをしたいというのもありました。しかし、根本的にはCisco UCSのコンセプトが、私たちが描いているクラウドの姿とぴったり一致したということがあります」(矢藤氏)。近畿大学では、従来からシスコ製のネットワーク機器を数多く導入した経緯があり、同社製のサーバーに対して非常に高い関心を抱いたという。

 矢藤氏は、コンピューターを中心に仮想化やリソース管理を取り込んだIBMなどのクラウド製品に比べ、ネットワークがコンピューターを取り込んでいるCisco UCSのほうが将来ビジョンに近いと考えている。「われわれの描いたクラウドが主流になるとすると、サーバーは買わないで済むようになります。スイッチが基盤にあって、サーバーやファイアウォール、DNSやらをモジュール単位で追加するような世界がくると想像しているのです」(矢藤氏)。

 確かに、Cisco UCSは「Nexus」というデータセンター向けスイッチに管理ソフトウェアを追加したファブリックインターコネクトが全体の頭脳となり、神経系統にエクステンダー、そして末端にサーバーといった具合で配置されたコンポーネントが、全体として1つのコンピューターを構成している。外からはスイッチにx86 CPUのコンピューターが搭載されているように見える点は、確かにネットワーク志向のデータセンターアーキテクチャといえる。「(複数の製品で)性能やサイジング効率を比べても、正直どこがよいかわからない。そういう意味で、今回Cisco UCSの導入に踏み切ったのは、やはりコンセプトの部分に共感したのと、あとは国内初導入という単純なチャレンジ精神です」と矢藤氏は話す。

 おもしろいのは、今回のプライベートクラウドの構築をまったくゴールと捉えていない点だ。「プライベートクラウドにしたからといって、削れるコストは数十%ですし、移設や管理の問題から考えれば、将来的にパブリッククラウドに全部移行するのが最適解だと思います。でも、現状ではセキュリティの問題やサービス面から考えても、まだまだパブリッククラウドへは移行できません」(矢藤氏)。そのため、今回のCisco UCS 導入はあくまでパブリッククラウド移行への橋頭堡と捉えているわけだ。

(次ページ、学内クラウドでクライアントをホスティングする)


 

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