4月7日、シスコシステムズ(以下、シスコ)は「Data Center 3.0構想」を体現する「ユニファイド コンピューティングシステム」を日本でも発表した。シスコがサーバ市場に参入するという点できわめてインパクトのある発表だが、仮想化技術のメリットをサーバやストレージのみに留まらず、コンピューティング環境全体に拡げる野心的な試みである。
仮想化技術でデータセンターのコンポーネントを統合
シスコのUnified Computing Systemは、サーバやネットワーク、ストレージなどの各コンポーネントを仮想化技術によって「統合(Unified)」した、新しいデータセンター向けソリューション。3月16日に米国で発表されたソリューションで、シスコのサーバ市場参入ということで注目を集めていた。
Unified Computing System(UCS)は、おもに以下の製品から構成される。
UCS Fabric Interconnect
20/40ポートのFCoE(FibreChannnel over Ethernet)を搭載するサーバ間接続の中継装置で、UCSのコントロールを司る最重要コンポーネント。同社のデータセンター向けスイッチ「Nexus 5000」をベースにしている。サーバを物理的に接続する「UCS Fabric Extender(後述)」を配下に接続し、上流で束ねる役割を果たす。
UCS Fabric Extender
シャーシ内のサーバと物理的に接続し、上流のUCS Fabric Interconnectと中継する。Extenderという名前の通り、論理的にはUCS Fabric Interconnectの一部を構成する装置。こちらは「Nexus 2000」をベースにしており、UCS Fabric Interconnectとの接続は光ファイバ経由、サーバ接続は10GBASE-KRという規格を採用するという。
UCS Blade Server Chassis
ブレードサーバを組み込むシャーシだが、論理的にはUCS Fabric Interconnectの一部となる。複数のブレード形状をサポートする。
UCS Blade Server
発表されたばかりのXeon プロセッサ5500番台を搭載する同社初のブレードサーバ。1ラックマウントのスペースに2台搭載可能なハーフサイズの「Cisco UCS B-Series Blade Server」のほか、48のメモリスロットを持ち、最大384GBまで拡張することが可能な「Cisco UCS B250-M1 2 Socket, Extended Memory Blader Server」も用意されている。SAS対応のHDDも搭載するという。
UCS Virtual Adaptor
ブレードサーバのネットワークアダプタの1種で、ハイパーバイザをバイパスし、最大128台までの仮想サーバと直結するためのネットワークアダプタ。その他、10Gbps EthernetアダプタやファイバチャネルのHBA(Host Bus Adaptor)も提供される。
Unified Computing Systemでは、こうしたコンポーネントが結合して1つのシステムを構築する。記者発表会でUnified Computing Systemについて説明したスコット・ローズ氏は「すべてのコンポーネントが他のエクステンションとして、機能している。そして、お互いをそれぞれ認識し、1つの集合体として展開される」と表現した。見た目ではわかりにくいが、UCS Fabric Interconnectを幹に、UCS Fabric Extenderがつながり、さらにその先に枝葉となるBlade Serverが配置される。そのBladeServer内には仮想サーバが搭載されており、お互いのリソースを必要に合わせて融通しあうという関係になるようだ。
そして、Unified Computing Systemでは、こうした統合したソリューションを提供することで、現在データセンターが抱えている多くの課題を解決されるという。
その1つは複雑化したシステムのシンプル化である。まず統合化により、スイッチやアダプタ、管理モジュールなどのインフラ機器、こうした機器を接続する不要な配線を取り去ることが可能。インフラ機器を約1/2まで減らすことができ、コストや管理の手間、さらに電力消費量を大きく削減することが可能になるという。
同社の試算では、320台のサーバを構築した場合、既存の環境で31本必要なラックの本数が12本で収まり、3520本必要だったケーブルは、480本に削減できる。また、投資額も43パーセントに抑えることができ、しかもアプリケーション立ち上げるのに数分で済むというメリットも披露された。
Unified Computing Systemは拡張性も高く、40のFCoEポートを搭載するUCS Fabric Interconnectを相互接続することで、最大320台のブレードサーバを単一のシステムとして管理できる。
さらに、管理機能がアーキテクチャに統合されているのもUnified Comuputing Systemの大きな特徴だ。まず各コンポーネントはUCS Fabric Interconnect上の「Cisco UCS Manager」というツールを用いて、統合的に管理することが可能になっている。
また、仮想化やアプリケーションなど、より高いレベルの管理については、サードパーティのツールが利用できる。具体的には、サーバなどの管理対象ごとにIDやMACアドレス、ネットワークID、BIOSバージョンなどのプロファイルが組み込まれており、公開されたAPIを元にサードパーティのツールから管理が実現する。これらは物理ハードウェアに縛られず、複製や移動、展開も可能となっている。利用するアプリケーションに合わせて、ダイナミックにリソースを割り当てることが可能になっているという。
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