MathMLで数式を表現する
MathML(Mathematical Markup Language)の一部サポートも、目玉といっていい。これまでは、FirefoxなどMozilla/Gecko系ブラウザー程度しかMathMLをサポートするブラウザーは存在しなかったが、WebKitに対応コードが実装されたということは、近いうちにSafariでもMathMLがサポートされることを意味する。これまでLaTeXなどを使い、画像化したうえで数式をWebにアップしていた理系学生には朗報だろう。
MathMLについて、簡単に説明しておこう。現在W3Cが仕様策定を進めているXMLアプリケーションで、マークアップ方式により数式を表現できることが特徴だ。規格の制定に動き出した時期は古く、策定中に破棄されたHTML 3.0の頃にまでさかのぼるが、当初はTeXの数式モードに似た表記方法を採用するなど、現在のものとはかなり文法が異なっていた。現在はXMLアプリであり、その表記ルールは人間が扱いやすいものとは言い難いが(表記ルールそのものはTeX/LaTeXの方が理解しやすい)、ブラウザーでパーシングするにはこちらの方が適しているといえる。
実際どのように表示されるかだが、W3Cにあるテストページから始めるといいだろう。大カッコが表示されないなど、冒頭で「一部サポート」とした理由もわかるはずだ。ちなみに、実装が先行していたFirefox(v3.6.8)では、サンプル画像どおりに表示されることを確認している。
次に試すべきは、W3Cの「MathML Test Suite」だ。MathMLのソースコードと、サンプルの出力結果とWebKitが描いた数式とを見比べることができるので、現在の実装がどの程度進んでいるかを確認できる。
以上、駆け足でWebKit r64727の新機能を追ってみた。Safariとして一般ユーザーの目に触れるのは、当分先のことになると予想されるが、動作も比較的安定しているため、WebKitをメインに使うのもアリだろう。
筆者紹介──海上忍
ITジャーナリスト・コラムニスト。アップル製品のほか、UNIX系OSやオープンソースソフトウェアを得意分野とする。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザーにして大のデジタルガジェット好き。近著には「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊、Amazon.co.jpで見る)など。
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