東芝がノートパソコン事業をスタートしてから今年で25年。今夏の新製品には、それを記念した特殊な製品がいくつか登場している(関連記事)。今回採り上げる「libretto W100」(以下W100)もそんな製品のひとつ。
一見すると「大きなニンテンドーDS」にも見えるW100は、どのような狙いで作られたものだろうか? 東芝開発陣へのインタビューを通して探ってみたい。
ゼロベースから「ほかにないパソコン」を探して
「2画面」に到達
インタビューの冒頭で、W100の商品企画を担当した商品統括部コンシューマPC第二担当主務の三好健太郎氏は、ことの経緯を次のように説明しはじめた。
三好「ことの始まりは、25年前にさかのぼるんです。ちょうどその頃、弊社はノートパソコンのビジネスをスタートしまして……」
思わず(幼児風に)「そこからじゃなくて!」と言いたくなってしまいそうだが、もちろんこれはある種の冗談。今回の製品は、東芝の「ノートパソコン25周年」記念モデルのひとつ。だから25年前の製品と直接の関係はないが、「25周年モデルとしての価値」を考えるところから、商品企画がスタートしているのは事実である。
三好「弊社はずっとノートパソコンを作ってきたわけですが、25周年に際して、『通常のノートパソコンではないものも、考えねばならない』と思っていました。弊社の幹部からも『節目なので、それなりのものを考えておけ』とも言われていました。これが1年半くらい前の話でしょうか」
とはいえ、その方向性が「キーボードレスで二つ折り」というのはかなり突飛だ。数ある「普通じゃない方向性」の中で、この形を選んだのはなぜなのだろうか?
三好「幹部から要望されていたのは、まず『他社がやらない』もの。これが至上命題でした。そして、パソコンの商品としては普通の使い勝手を超えていて、欲しくなるもの。これが大命題でした」
この企画は最初から「librettoにすることありき」ではなかったという。「他社がやらないパソコン」を作ったら、それが結果的にlibrettoになった、というのが実情であるようだ。
三好「やはり東芝という企業の人間として、『libretto』の名前は常に意識するものです。ならばどうするのか? 小さくて持ち運びができなくてはいけないのはもちろんですが、小さいだけならネットブックもあります。あれよりも一回り小さくしたかった」
「ですが、今はネットブックよりも小さくてキーボードがあるパソコンというのも、数多くあります。ですから、それらと同じにするわけにもいくまい、というのが正直なところでした」
「普段していることをそのままできる」
ためのWindowsプラットフォーム
気になるのは、最初から「Windowsを利用するプラットフォームありきだったのか」という点だ。例えば、iPadが低価格かつ薄型のハードでも快適な操作性を実現しているのは、「パソコン用OS」にこだわっていないためだ。また、同じ25周年モデルの中には、OSにAndroidを採用した「dynabook AZ」のような製品もある。だが、W100はあくまで「Windows PC」として作られた。
とはいえ、初期の企画段階では「Windowsを使う」ことは必須とされていなかったようだ。
三好「25周年モデルとはいえ、Windowsを使うことが定められていたわけではありません。それを含めてゼロベースから企画し、最終的に現在へと至りました」
ではなぜWindowsなのか? それには「libretto」の名前に関わる部分も大きかった。デザインからCPU選択に至るまで、最終的な構成が「Windows+libretto」というコンセプトで定義されているのだ。
三好「この製品は、『1台目としても2台目としても使える』ようにしたかったのです。元々のlibrettoが登場した際も、『ディスプレーやキーボードをつないで使える』というコンセプトが大きいものでした」
「その点でも、今まで築き上げてきたWindowsのプラットフォームは、やはり維持した。iPhoneアプリが増えているとはいえ、まだまだWindowsアプリの方が数は多いですし、iPhoneではできないことも多い。W100はまったく新しいデザインではありますが、『まったく新しいことだけ』をしてもらおうと考えたのではないのです」
「だから、『普段やっていることをそのままできる』ものにしたかった。そのためには、Windowsであることが重要と考えました。『ライフスタイルを変える』といったことは、この製品では言わないということです」
「また、1台目として使っていただくことを考えると、CPUがAtomでは速度的に厳しいと感じることも多い。だからこうした部分をカバーすれば、昔からの『リブラー』の方々にもご満足いただけるのではないか、と考えました」
詳しくは後述するが、W100は最近の小型ノートには珍しく、Atom系ではなくCore i系のPentium U5400(1.2GHz)を採用している。良くも悪くも、このことが製品のコンセプトに関わり、性能からデザインまでを規定していくことになった。
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