このページの本文へ

西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第51回

開発者に聞く 2画面librettoはいかにして生まれたか

2010年07月16日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

実は以前から検討されていた2画面化

 W100が「librettoの伝統」を守っているのは、「サイズ」くらいのものだろう。「2画面」という、パソコンとしては新しいカタチがやはり目を惹く。どうしてもニンテンドーDSを想起させるものがあるし、東芝側も「そう見えるだろう」と冗談めかして笑う。

 だが、パソコンを「2画面で作ること」そのものは、急に浮上したものではないようだ。ハードウエア開発を担当した、PC開発センターPCシステム設計部主務の渡辺 玄氏は「実際には、2画面はずいぶん昔から検討していた構造」と語る。その上で、実際にやるか否かを考えるのが問題だったようだ。

三好「ソフトキーボードの全面採用を考えはじめたのは、ずいぶん前からです。しかし、実際に『これでいける』と考えたのは、昨年夏あたりのことでしょうか」

「本当は、現在よりもさらに2mmくらいサイズを小さくしたかったくらいなんです。このサイズになってくると、そのまま小さなキーボードを入れて、パソコンの『片側』を固定してユーザーの自由度を奪うのがいいのか、ということを考えました。それなら、この際ソフトキーボードにしてしまおうと」

「2画面ありきでスタートした企画ではないのですが、ソフトキーボードならなんとかなるんじゃないか、と考えたのは事実です」

 W100のデザイン担当である、デザインセンター情報機器デザイン担当参事の杉山宏樹氏はこう話す。

杉山「どのようなカタチでも、キーボードを搭載している現状のデザインでは、パソコンの用途は変わらないと考えました。しかし、2画面なら変えられるかもしれない」

「現代はさまざまな情報機器が登場し、電車の中や路上でも皆が利用しています。そういった要素をパソコンも持たなくていいいのか? という意識もありました。両手の10本指で打つ物理キーボードである限り、それは膝の上で利用するものになります」

「結果的に、W100は両手でタイプするキーボードから脱却し、パソコン的なイメージからは離れたかも知れません、でも、パソコンをデザインしようという気持ちはあったんです」

W100では「両手持ち」も可能

W100では「両手持ち」も可能。パソコン的な「両手でタッチタイプ」のイメージから離れる、という検討の結果生まれたものだ

 実際にW100のデザインを担当した二宮正人氏は、こうも語る。

二宮「スレート型は大画面になるので、カバン内での収まりが悪いんです。また、キーボードを入力する際に本体を傾けないといけない。しかしどちらも、折りたたみならOKです。形状での優位性はある、と考えたのです」

「ちょっとしたことですが、中央のヒンジも平行に曲がるように、内部にリンク機構を入れています。二軸ヒンジを採用した商品は少なくありませんが、平行に曲がるようにリンクして動くものはほとんどないと思います。これは、『本のように開閉してもらいたい』というデザイン上の要求と、技術的な面、両方からの判断です。最初に二軸ヒンジのパーツを見た時には、動き方にちょっと感動しました(笑)」

三好「実はiPadが出た時に、『板状で助かった』と思いましたね(笑) 差別化できますから」

杉山「本当は中央のヒンジ部をもう少し薄くしたかったんですが、残念ながら現状ではこれが精一杯です。他方で、この部分を持っても使いやすい、という利点もあります」

「板」として使った時のサイズは、iPadと面積・厚みともにほぼ同じ

「板」として使った時のサイズは、iPadと面積・厚みともにほぼ同じ。中央のヒンジで折りたたんで利用できるところが大きく異なる

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン