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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第51回

開発者に聞く 2画面librettoはいかにして生まれたか

2010年07月16日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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ソフトキーボード採用は「振動」で決まった

 結果として、W100にはキーボードがなくなり、「板」としても「クラムシェル」としても使える形状となった。物理キーボードは姿を消し、ソフトキーボードとなる。

 ソフトキーボードに拒否感を感じる人はまだいるだろう。だが、現在のソフトキーボードは、昔のそれに比べて相当に良くなってきている。W100も例外ではない。三好氏の言葉にもあるように、W100のソフトキーボードの特徴は、キートップが「大きめ」であることだ。

 W100は7型ワイドのディスプレーを2面搭載している。ソフトキーボードにはいくつかレイアウトが用意されているが、文字入力の基本スタイルとなるであろう「Simple Type」では、キートップのサイズが(本体サイズで)1ランク上のモバイルノートに近いサイズとなる。この辺りは、iPadのソフトキーボードにも共通の要素である。

ソフトキー配列の例

ソフトキー配列の例。メインキーの表示を大きめにし、入力のしやすさに配慮している。ソフトキーの設定はテンキーを含めて6種類用意されており、好みのものを選べる

 キートップが大きめであるため、入力速度は意外なほど速い。もちろん物理キーと同じにはならないが、ビュワー向けの「代替品」という印象ではない。

 その秘密は、タッチに「物理フィードバック」が組みこまれているためだ。入力のためにタッチすると、内蔵のバイブレーターが振動し、確実に「入力された」ことをユーザーに伝えてくれるのである。

三好「ソフトキーボードでいけると思ったのは、Haptics(触覚)の振動によるインターフェースがモノになりそうだ、とわかったからです。試しにテスト基板で実装してみると、周囲の反応は非常によかった。当時、日本の携帯電話では実装例もありませんでしたし、iPhoneも利用していません。7型サイズのディスプレーでは、このインターフェースがないとつらいだろうと判断し、搭載することになりました」

「製品では、このサイズでもモーターひとつで振動を実現しています。最初は『モーター3つ』という話もあったのですが、なんとかひとつでいけるという話になりました」

渡辺「それが可能になった理由は、構造上の工夫にあります。振動用モーターは、底面側右上あたりにあります。使っているのは携帯電話のバイブ用モーターと、構造上は同じものです」

「しかし、ディスプレーユニットは重さが350gくらいあります。さすがひとつのモーターでは、それ全体を揺らすことはできません。モーターはフラットな表面の裏についているんですが、実はタッチ画面部分だけをフローティング構造にしているのです」

三好氏

よく見ると、タッチパネルと周囲の間に、ほんの少しすき間があるんです(三好)

三好「ですからよく見ると、タッチパネルと周囲の間に、ほんの少しすき間があるんです。製品版では、ほとんど見えるか見えないかくらいのすき間ですが、確実に浮いています」

渡辺「浮かせてしまえば、タッチパネル自体は50gくらいなので、それをひとつのモーターで揺らすことができます」

 そうなると気になるのは、「振動」でどのくらいの電力を消費するのか、という点だ。

渡辺「評価してみましたが、Hapticsでの電力消費は20mWh程度です。確かにモーターを使うので、瞬間的な電流は大きいのですが、平均的な消費を見るとあまり大きくなりません」

 実際のW100を見ると、高い工作・設計精度が求められるもので、多くのメーカーがすぐに採用できるような構造には見えない。だが、大画面でタッチ入力する場合、この振動の効果は非常に高い。少なくともこの点においては、W100開発チームの狙いは当たっている。

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