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SUPER GTに痛車が参戦! 初音ミク×GSRポルシェ密着レポート 第18回

GT決勝で奇蹟の追い上げを見せたミクポルシェ

2010年05月07日 22時05分更新

文● 末岡大祐/ASCII.jp編集部 ●撮影/鉄谷康博、加藤智充、編集部

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失うモノは何もない!
ここから巻き返しタイム!

 だが、こんな事態でも心が折れないのがGSRのドライバーである。その後も、ベストタイムを連発しながら、前のクルマとの距離を縮めていく番場選手。16位くらいまで順位を上げたところでピットイン。ここではタイヤ交換とドライバー交代を行ない、佐々木選手の出番となった。これまで、慣れないGTカーに翻弄されていた佐々木選手だが、ここでは会心の走りを見せ、なんと徐々に順位をアップさせる。46周目くらいで同じタイヤを使うハンコックポルシェにトラブルが起き、リタイヤとなった。これにより、順位がひとつ上がったものの、上位陣とのタイム差は大きく、ついにはラップダウン(周回遅れ)にされてしまう。

 60周目で2回目の、そして最後のピットイン。ここで大橋監督は給油のみのタイヤ無交換という作戦に打って出た。佐々木選手のタイヤの使い方、そして番場選手のドライバーとしてのポテンシャルを信じての決断だった。残り20周を切ったレース終盤には9位まで浮上したが、その後は徐々に順位を落としてしまったミクポルシェ。それでも、400kmは最後まで何が起きるかわからない。少しでも上位を狙うため、そして997に良い形でバトンを渡すため、全力で走るミクポルシェと番場選手。だが、無情にも振られるチェッカーフラッグ。996 GT3 RSRのラストランは、結果14位と完全燃焼とは言い切れない順位で終わってしまった。

 なお、GT300クラスの結果は、1位にトヨタのお膝元で念願の勝利を成し遂げた#74 カローラアクシオ、2位はファイナルラップまで#74と激しいバトルを繰り返した#43 ARTA ガライヤ、3位は今年投入されたばかりのニューマシン、通称「でちゃうマーチン」こと#66 triple a ヴァンテージであった。


さようなら996! ありがとう996!

 GSRポルシェの次は、6月のセパンをスキップし、7月のSUGO戦で待望のニューマシンがデビューする。もちろんそれは歓迎することだし、戦闘力も飛躍的にアップするのは間違いないが、今回限りで引退する996に愛着が出てきているファンも多いのではなかろうか。当初から996は3戦まで、その後はクルマを変えるという予定だったので、前半戦は「新型マシンが来るまでの繋ぎ」と思っていた人もいるだろう。事実、チームスタッフも「前半は苦しい戦いになる」と言っていた。だが、996はそれを覆す働きを見せた。もちろん、苦しい戦いには違いなかったが、型落ちマシンゆえの熟成感と信頼性、データの豊富さで、セッティングがドンピシャにハマったときには上位陣にも入り込めるタイムを叩き出した。マシントラブルにも素早く対応・修理し、クラッシュに巻き込まれたり、スピンしたりで順位を落としたとしても、巻き返せるだけの戦闘力を発揮して皆を驚かせた。もちろん、番場選手や佐々木選手の頑張りもある。特に今回のレース序盤では勝利の女神はミクだったのか!? と思わせるほどの活躍を見せた。

 もう6年も前のクルマが、現役のクルマと真っ向から戦ったのである。それはファンにとってもチームにとっても悲願である表彰台を、一瞬でも夢見させてくれたし、次の997への希望をも見せてくれた。そして、14位という結果だけ見れば不完全燃焼かもしれないが、序盤に見せたあの閃光のごとき走りはSUGO以降の戦いを期待させてくれた。これまで、上位陣が脱落したり、ピットインの間に抜いたりして、比較的上位に位置したことはあったが、今回は正真正銘オーバーテイクのみで4位にまで上がったのである。決して「ただ14位だった」のではなく、カタチには表わせない非常に多くのモノを得た14位だったと言える。

 ニューマシンである「997 GT3 R」は日本に1台だけの、完全な新車だ。したがって、これまでのデータが一旦リセットされるため、セッティングなどが手探りの状態から始まるだろう。おろしたての洋服は自分の体に馴染ませる必要があるように、クルマも馴染ませていかねばならないのだ。また苦しい戦いになるとは思うが、ポルシェには「最新こそ最良」という言葉がある。また、これまでの3戦も決して無駄ではない。996 GT3 RSRが繋いでくれたこの流れは、今後激流となって、他のクルマを飲み込んでくれるに違いない。

(次ページへ続く)

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