本題に戻って、参照サイトを分析します。一般的には、参照サイトの新規セッション率と直帰率の高低は、以下のように解釈するとよいでしょう。
新規セッション率が高く、直帰率が低い | 新発見の鉱脈。新しいユーザーがコンテンツに満足した。 |
新規セッション率が高く、直帰率が高い | 見物客。これまでリーチできなかったユーザー層だが、コンテンツには興味がなかった。 |
新規セッション率が低く、直帰率が低い | 寄り道客。非常によく似たユーザー層にリーチしている、他のサイトの常連ユーザー。 |
新規セッション率が低く、直帰率が高い | 素通り客。よく訪れるユーザーだが、コンテンツに本心から興味があるわけではない。 |
「この表を参考に、どのサイトからユーザーを奪取すればいいか考えればいいわけですか?」――理論的にいえば、「新規セッション率が高く、直帰率が低い」参照サイトから訪れたユーザーは、常連客になりやすいでしょう。また、「新規セッション率が低く、直帰率が低い」参照サイトから訪れたユーザーも、今までなぜ常連客にできなかったのかを検討すれば、問題を解決できそうです。逆に、「新規セッション率が高く、直帰率が高い」参照サイトから訪れたユーザーは、サイトのコンテンツとの相性はあまりよくないようです。また、「新規セッション率が低く、直帰率が高い」参照サイトから訪れたユーザーは、よく訪れる割には常連化していないか、どちらのサイトも訪れているかのどちらかでしょう。
「ということは、新規セッション率にかかわらず、直帰率が低い参照サイトからのユーザーを常連化する方法を考えればいいわけですね?」――この後は、具体的に参照サイトを見ましょう。以下は、期間Bの直帰率が低い参照サイトの上位10件です。
新規率高×直帰率低 | 新規率低×直帰率低 |
---|---|
bbs.kakaku.com | rakugakidou.net |
dailynews.yahoo.co.jp | google.co.jp |
ubuntulinux.jp | mactree.sannet.ne.jp |
74.125.153.132 | jp.fujitsu.com |
yamaha.co.jp | karzusp.net |
mediajam.info | デジタルカメラ専門サイトX |
mozilla.jp | google.com |
antec.com | blog.livedoor.jp |
iodata.jp | odak66.cool.ne.jp |
digitallife.jp.msn.com | links.co.jp |
たとえば、「bbs.kakaku.com」は価格比較サイトですし、「ヤマハ」(yamaha.co.jp)は企業サイトですので、ASCII.jpのユーザーとして取り込むのはまず不可能でしょう。「Googleニュースリーダー」(google.co.jp)はRSSフィードのWebアプリケーション、「livedoor Blog」(blog.livedoor.jp)はブログサイトですので、そもそもWebサイトの主旨が異なります。参照サイトとコンテンツの相性はよさそうですが、だからといって常連化できるわけではないのです。
一方、「デジタルカメラ専門サイトX」はこの中では唯一同業のメディアサイトで、ASCII.jpよりも規模が小さそうです。デジカメ専業メディアで常連ユーザーも多そうですが、ASCII.jpがデジタルカメラ専門サイトX並にコンテンツを充実させれば、もしかすると固定客を奪取できるかもしれません。本稿はASCII.jpの運営方針を述べているわけではありませんので実名は出しませんが、可能性としては高そうです。
「なるほど。ところで期間Aと期間Bの比較だったと思いますよ」――そうですね。では、期間Aについても直帰率が低い参照サイトの上位10件を見てみましょう。
新規率高×直帰率低 | 新規率低×直帰率低 |
---|---|
bbs.kakaku.com | google.co.jp |
ime.nu | jp.fujitsu.com |
ubuntulinux.jp | mactree.sannet.ne.jp |
digitallife.jp.msn.com | google.com |
74.125.153.132 | デジタルカメラ専門サイトX |
egone.org | karzusp.net |
mediajam.info | kamo.pos.to |
antec.com | d.hatena.ne.jp |
mozilla.jp | reader.livedoor.com |
index.ascii.jp | odak66.cool.ne.jp |
ほぼ同じようなサイトが並んでいますが、期間を変えて集計したとき、新規セッション率が高い方から低い方に移動するサイトがないか注意してみてください。先行する期間では新規セッション率が高い方にあり、続く期間で新規セッション率が低い方にある場合は、特定ページにユーザーが訪れ、その後何度も訪れている可能性があるからです。メディアサイトであれば後追いのコンテンツを作ると読まれるでしょうし、物販サイトであれば価格比較サイトなどから送り込まれて、購入を迷っているユーザーの背中を一押しするようにコンテンツを修正するとよいかもしれません。
一方、「デジタルカメラ専門サイトX」は、期間Aでも新規セッション率が低い方に分類されています。どうやら、ASCII.jpへのリンクをいくつも張ってくれているサイトなので、参照トラフィックを常時生んだり、いっそのことサイトのユーザーごと奪取できるように、コンテンツを整備するとよいかもしれません。
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以上で参照トラフィックの分析は終わりです。次回はGoogle Analyticsの基本設定について説明します。
著者:中野克平(なかの かっぺい)
アスキー・メディアワークス技術部基盤研究課係長(兼デジタルコンテンツ部編成課係長)。ASCII.jpをはじめとするアスキー・メディアワークスのWebサイトについてアクセス状況を解析し、事業を改善する報告をしながら、基盤となる検索エンジン技術、Webアプリケーションの研究開発を担当している。