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ゼロからはじめるストレージ入門 第12回

サーバ仮想化とは何が違う?

シンプロビジョニングによるストレージ仮想化とは?

2009年11月20日 09時00分更新

文● 竹内博史/EMCジャパン株式会社 グローバル・サービス統括本部 テクノロジー・ソリューションズ本部 技術部 マネジャー

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究極のストレージ仮想化を行なうストレージ仮想化エンジン

究極のストレージ仮想化製品:ストレージ仮想化エンジン

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 複数の異機種ストレージ筐体を仮想化するには、図4のようにサーバとストレージの間に「仮想化エンジン」を配置する構成が一般的だ。仮想化エンジンは、ストレージが提供する論理ボリュームをいったん取り込み、実装されているボリュームマネージャーやボリュームマスキング機能を通じてサーバに新たな論理(仮想)ボリュームを提供する。そのため、サーバからは仮想化エンジンは大きなストレージのように認識され、一方ストレージに対しては大きなサーバのようにふるまう。

図4 ストレージ仮想化エンジンの構成例

 このストレージ仮想化エンジンは、ストレージインフラに以下のような新たな機能を提供する。(図5)

  1. ボリュームマネージャー機能によるストレージ使用率の向上
  2. 仮想化エンジンインターフェイスによる異機種ストレージに対する管理の一元化、簡素化
  3. ストレージ筐体間のI/O無停止でのデータ移動・移行による
    •  ストレージ使用率やI/O負荷の平準化
    •  ストレージ階層化の実現
    •  無停止でのストレージ筐体リプレイス
  4. 異機種ストレージ間のレプリケーション

図5 ストレージ仮想化エンジン導入のメリット

 これだけの魅力ある機能を提供するストレージ仮想化エンジンだが、ベンダーがもくろむほどは企業へ普及していないのが実状だ。多くの企業は、ストレージ仮想化エンジン採用に関して、以下のような懸念を持っている。

稼働実績と信頼性・保守性
 基幹業務や大規模ストレージインフラで使用実績は、まだ少ないといわれている。仮想化エンジンの性能や信頼性が、ストレージインフラ全体の性能・信頼性を左右するため、企業ユーザーはより慎重に導入を検討せざるを得ない。また、異なるベンダーのストレージを仮想化する場合は、ベンダー間の保守や責任分界点があいまいになりがちで、障害発生時の対応に不安が残る
仮想化レイヤを追加することによる管理の複雑化
 日常的な運用は、ストレージ仮想化エンジンのインターフェイスのみで賄えるが、物理的な増設作業はストレージに対して実施する必要があり、その際は各々のストレージに対する個別操作が必要となる。そのため、本当に管理を一元化,簡素化できるか疑問を持たれるケースが多い

 また、ストレージ仮想化エンジン導入によるコスト削減効果についても、一般に図6のようなポイントが考えられているが、一方ではそれぞれの効果に対して懐疑的な見方もある。したがって、サーバ仮想化ほど明確にコストメリットが謳われていないのが現状だ。

図6 ストレージ仮想化エンジン導入によるコスト削減効果について

 もちろん、サーバ仮想化の技術についても、リリース当初は同様の懸念は多くのユーザーが持っており、普及が進まない時期もあった。各ストレージベンダーが、これらユーザーの懸念をどれだけ払拭できるかが、ストレージ仮想化エンジン普及の鍵となる。

(次ページ、「効果がわかりやすい仮想プロビジョニング」に続く)


 

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