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ゼロからはじめるストレージ入門 第12回

サーバ仮想化とは何が違う?

シンプロビジョニングによるストレージ仮想化とは?

2009年11月20日 09時00分更新

文● 竹内博史/EMCジャパン株式会社 グローバル・サービス統括本部 テクノロジー・ソリューションズ本部 技術部 マネジャー

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ここ数年、IT関連のメディアで「仮想化」が話題に出ない日はなく、依然仮想化は注目度の高い技術だ。ストレージの世界においても、「仮想」と名が付く機能や製品が増えているが、サーバの仮想化と同様の高いコスト効果が得られるものなのだろうか?今回は、ストレージ仮想化技術に触れながら、その具体的な効果に着目し解説する。

仮想化とは?

 まずは「仮想化」の定義についておさらいしよう。仮想化とは、物理的なリソース(ハードウェアなど)や構成を隠ぺいした抽象的な(仮想化された)媒体を作成する技術で、物理的な束縛を超えた柔軟なリソースの利用が可能となる。サーバの仮想化を例に、より具体的な仕組みと効果について説明する。

 1台のサーバにOSをインストールして使用する場合は、サーバのハードウェア構成(ネットワークインターフェイスやグラフィックカードなど)に合ったドライバをインストールする必要がある。OSのブートドライブイメージは、同一のハードウェア構成のサーバであればコピーして使用できるが、異なるハードウェア構成のサーバにそのままコピーしても動作しない。サーバの仮想化ソフトウェアは、このサーバハードウェアの差を吸収する仕組みを提供している。

 サーバ仮想化環境では、特定のハードウェアをエミュレーションした「仮想マシン(サーバ)」に、OSをインストールする。この仮想マシンは、仮想化ソフトウェアを経由して異なるハードウェア構成のサーバ上で動作するため、サーバの移行や移動が容易となり運用の柔軟性が向上する(図1左)。

図1 サーバ仮想化の基本的な仕組み

 また、仮想化ソフトウェアを使用すると、複数の仮想マシンを1台のサーバ上で動作させるも可能となる。最近のサーバはCPUの能力が高く、通常の運用状態ではCPU使用率がそれほど高くない。この実情をふまえ、複数の仮想マシンを少数のサーバで動作させると、サーバ台数の削減(統合)が可能となる。企業が仮想化に注目している理由は、このサーバ統合によるコスト削減にあるといってよい。(図1右)

サーバとは異なるストレージの仮想化

 一方、ストレージを「仮想化」するとはどういうことなのだろうか?サーバからは、ストレージは「ドライブ」として認識されている。PCやサーバの内蔵ドライブであれば、図2左のように直接HDDを認識している。異なるベンダーのHDDであっても、SCSIやATAなどの標準化されたプロトコルを通じてデータにアクセスするため、HDD間のデータの移動や移行は当然可能である。

図2 ストレージはHDDを隠ぺい(仮想化)して論理ボリュームを提供

 また、サーバからストレージを利用する場合は、ストレージが提供する論理ボリュームを「ドライブ」として認識し、ストレージ内のHDDやRAID構成はストレージにより隠ぺいされサーバは意識しない(図2右)。むろん、SANなどのネットワークを利用することにより、複数のサーバのデータを1台のストレージに統合することも可能だ。

 このように、サーバとストレージではハードウェアの複雑さや標準化の度合いに違いはあるものの、従来のストレージでもサーバと同様にすでに「仮想化」を実現している。つまり、運用の柔軟性向上やコスト削減といったメリットについても、「仮想化」という冠をかかげずに、これまでのストレージ技術で提供していたのだ。

 それでは、現在ストレージベンダーが主張する「ストレージの仮想化技術」は、具体的にどのようなものだろうか。図3のように、ストレージ仮想化技術は大きく2つに分けられる。1つはストレージ筐体内の構成や容量を仮想化する技術で、従来のストレージ技術を進化させストレージをより高い効率で利用することを目的としている。もう1つは、ストレージ筐体を超えて複数かつ異機種のストレージを仮想化する技術だ。こちらは、ストレージ筐体間のデータの移動や移行を容易にすることにより、運用の柔軟性向上を図った新しい技術である。

図3 2種類のストレージ仮想化技術

(次ページ、「究極のストレージ仮想化を行なうストレージ仮想化エンジン」に続く)


 

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