10月21日、シスコシステムズ(以下、シスコ)は、新しいアーキテクチャである「ボーダレスネットワーク」と、その第一弾のルータ製品であるCisco ISR(Integrated Services Router)のGeneration 2(以下、Cisco ISR G2)を発表した。これは10月20日に米国で発表されたもので、同社のコアビジネスであるネットワークに関する重要な取り組みとなる。
ボーダレスネットワークで
シスコはなにを取り去るのか?
新アーキテクチャであるボーダレスネットワークについて説明を行なったシスコシステムズの北川裕康氏によると「今まで企業ではスケーラビリティ、アベイラビリティ、パフォーマンスという3つの要件が重要視されてきた。これからは場所、デバイス、アプリケーションの障壁をなくしつつ、こうした要件を満たす必要がある」という。これを実現するのが、ボーダレスネットワークというアーキテクチャだ。「1つはポリシーベースで自動化を推進する。2つめはSaaSモデルをネットワークの世界に取り入れ、ハードウェアの投資を保護する。3つめは異なるネットワークをコンバージョンしていく」(北川氏)という3つの方向性が背後にある。
そして、このアーキテクチャの第1弾は支店・支社のボーダレス化のために投入されたのが、Cisco ISR G2ということになる。Cisco ISRはサービス統合型ルータという名前の示すとおり、複数のスロットを持つ筐体にVPN、ファイアウォール、VoIP、ワイヤレスなどのモジュールを追加することで、ルーティングやフィルタリングにとどまらない幅広いサービスを実現する。
マルチコアプロセッサや動画処理用DSPも搭載
第2世代となるCisco ISR G2について解説したシスコシステムズの大木聡氏は、「ボーダレスネットワークに対応するということで、まずは移動するユーザーをサポートし、複数の端末をうまくマネージする。そして動画やクラウドなどの新しいアプリケーションサービスへの対応も行なえる」とボーダレスネットワークとISR G2の関係を語った。
ISR G2ではマルチコアプロセッサの採用や内部のサービスモジュールの高速化、サービスやモジュール間の接続性を向上したギガビット対応のファブリック搭載などにより、従来に比べて最大で5倍のパフォーマンスを実現。インターフェイスもギガビットに対応し、5年先を見据えた余裕のある処理能力を持たせている。
ISR最大の特徴であるサービスモジュールも、数多く取り揃えられた。ISR G2にはSM(Service Module)スロットとISM(Internal Service Module)スロット、EHWIC(Enhanced High Speed WAN Interface Card)スロットなどが用意されており、さまざまなインターフェイスカードやサービスモジュールなどを追加できる。
ベーシックなLAN用サービスモジュールとしては、Catalyst 3560-E、2960シリーズと同等の「Cisco Enhanced EtherSwitchサービスモジュール」が用意される。16/24/48ポートのモジュールが用意され、ポート当たり20Wを供給するEnhanced PoEにも対応するという。また、ボーダレスネットワークで特に重視されているビデオをメインにしたアプリケーションに対応するため、高速な音声・動画処理を実現するDSPモジュールも提供される。DSPモジュールはPVDM3(Packet Voice/Data Module)スロット(以下、DSPスロット)が用意されているモデルに追加することで、最大4倍のパフォーマンス向上を実現する。
さらにHSPA対応のWANモジュールでは、単なる3G経由での通信だけではなく、TCPパケットの圧縮やキャッシングなどのWAN高速化の機能を実装。ワイヤレス通信での細い帯域を有効活用できるようにしている。
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