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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第2回

IT投資を守ろうとする欧米、すぐに捨てさる日本

2009年10月01日 09時00分更新

文● 大河原克行

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ただ切り捨てるだけでは、いずれ行き詰まる

 期間限定であったSave Money.キャンペーンは、実は、その名前から直感的に感じるような、投資コストを削減しようというものではない。むしろ、本来の狙いは、その名前とは裏腹に、いまこそIT投資を積極化しようというものなのだ。

マイクロソフトの樋口社長

 GDPは1~3月以降、上昇基調に転じ、景気は底を打ったとされるものの、雇用や設備投資については、まだ厳しい局面が続いている。現実的に景気が回復基調に転じたという実感が薄いのが事実だ。

 こうしたなか、マイクロソフトのSave Moneyキャンペーンおよび新キャンペーンの提案は、実はSave Moneyしたものを、次の投資につなげるという考え方の提案となる。

 マイクロソフトの樋口泰行社長は、「日本の企業はコストダウンというと、切り詰めることしか考えないケースが多い」と前置きし、「短期的に業績を改善する解決法としては、切り詰めることが必要。だが、問題は、切り詰めた部分を次の戦略的投資に回すことができるのかどうかという点」と指摘する。

 ITコストを絞り込んだことで、新規ITシステムに予算がまわらず、既存システムの保持だけにITコストが活用された場合、年々保持コストは増大する一方になる。これに加え、長期的視点で見た場合、次の成長時にITシステムが追いつかないという状態に陥りかねないのだ。


失敗の経験が、IT投資の重要性を実感させる

 樋口社長自身、大手流通のダイエーで、社長を務めた際に、それまでの経営再建策のなかで、コスト削減が優先され、IT投資が大幅に縮小。それによって、電子マネーへの対応、顧客サービスの強化に大きく出遅れたという経験を持つ。

「コスト削減といった場合、欧米の企業は、最後までIT投資を守ろうとするが、日本の企業は、上から3番目にIT投資の削減をあげている。これでは、成長フェーズに入った途端に、欧米の企業との格差は大きく広がる」

と語る。

 Save Money.キャンペーンは、マネー(投資)をセーブするというのではなく、セーブしたマネーを次の投資にまわすというのが本質的な狙いとなる。

 企業にとって正しいIT投資の考え方とは、単にIT投資コストを削減するだけでなく、削減したものを新たな領域に投資できるかどうかにある。そこに、Save Money.キャンペーンの本質がある。

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