総務省の官民癒着コンビ
民主党政権がスタートし、新しい閣僚も決まった。特に情報通信政策との関連で注目されるのは、原口一博総務相と内藤正光副大臣のコンビだ。特に原口氏は、今年4月のテレビ番組で、「民主党政権になればテレビは明るくなる?」という質問に対して、「明るくなりますよ。だって今、電波料いくらとられてます? 一生懸命稼いでいるのがですよ。天下りとかいろんなのに使われてるじゃないですか。それを思いっきり下げますから」と語ったことが話題になった。
それに対して、自民党の総裁に立候補した河野太郎氏は、ブログで電波利用料の実態を明らかにし、「テレビ局の電波利用料負担は総計で34億4700万円にしかならない。一方で営業収益は3兆1150億8200万円。電波を独占して上げる収益に対して利用料が千分の一。低すぎませんか」と指摘した。断っておくが、これは原口氏が野党、河野氏が与党の議員だったときの発言である。
原口氏は今週さっそくペルーに行って、ペルー、ブラジル、アルゼンチン、チリの4ヵ国と日本方式の地上デジタル放送(ISDB-T)の普及に向けて協調することを確認した。しかし上の図のように、世界の地上デジタル放送の大部分は欧州方式のDVB-Tで、今からISDB-Tが「南米標準」になったところで、ガラパゴス規格になるだけだ。このような「日本発の国際標準」という技術ナショナリズムが、日本の情報技術を世界から孤立させ、絶滅の淵に追いやったことを原口氏はまだ理解していないのだろう。
おまけに副大臣の内藤氏は、NTT労組の出身だ。NTTは労使が一体化した企業であり、これは規制対象であるNTTが通信行政に関与する異例の人事だ。彼は通信・放送の規制を独立行政委員会で行なう「日本版FCC」に熱心な一方、NTTの再々編論議を否定し、周波数オークションにも消極的な姿勢を示した。これがNTTの三浦 惺社長が記者会見で再々編に反対し、オークションに反対した姿勢と一致するのは偶然ではないだろう。民主党の情報通信行政は、自民党以上に「与党的」になりそうだ。
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