静電場センサ組立キットのしくみ
ここまで地震のしくみを理解していれば、静電場センサのしくみは簡単。プレートに起因する地震でも、内陸部の断層に起因するものでも、地震の発生前には必ず岩盤と岩盤の間に巨大な圧力がかかる。しかも岩盤の大半は、圧力をかけると電気を発生する花崗岩と言われている。
つまり、まだ地震が発生していない状態でも岩盤(花崗岩)には、歪みという大きな圧力がかかり電気が発生する。その電気の行く先は、震源地となる大地や建物などに静電気となって蓄えられる。
静電場センサは、平常時は穏やかな静電場を監視し、岩盤の歪みや地震などによる静電場の乱れを感知し、地震発生前に異常を検知するものだ。ナマズのように、方位や距離などまで捕捉することはできないが、地震が発生する可能性をあらかじめ検知するには十分だろう。
P波やS波は地震が発生してからしか検知できないが、静電場の乱れは発生前から検知できるというわけ。とはいえ、大地で静電場異常を起こすには膨大な電気エネルギーが必要なので、計算上はM6以上の大地震で、震源地から半径50km以内を検知できるということだ。
考案したのは大阪大学の池谷元伺名誉教授。氏は地震予知に関する科学的なアプローチの本を何冊か出版している地震のエキスパートである。子供用のウソ発見器のキットとは違い、簡単なキットではあるが、技術的な裏づけがある測定器と言ってもいいだろう。
写真は組み立て後の完成品。金属製のボールが静電場を監視するセンサとなっている。金属製のザルは、大気中の電場を遮断するためのシールドだ。これによって、大地方向の電場の乱れのみをキャッチする。静電場は、竜巻や雷でも乱れることが確認されているので、大気からのノイズを拾わないようにしっかりシールドしておこう。
ここまでくれば「大地震の前にナマズが暴れる」という現象が理にかなっているという根拠はすでにお分かりだろう。地震の前に岩盤から発生する電気信号は、ナマズの周りのあちこちで電場を乱すので、小魚はどこに居るんだ! と暴れるというわけだ。
静電場センサを作ってみた
キットのパッケージは箱になっていて、これがそのままケースになるというもの。
半田付けは一切不要なので、小学校の低学年でも作れるだろう。ただ地震のしくみを理解し観測するなら、中学生~高校生以上の知識が必要だ。
組み立ては、基板から出ているリード線を付属のテープで金属球の内側に貼り、半球同士をテープで貼り付けるだけ。
製作時間は10分ほどだ。あとは別売の単3乾電池2本と、キッチンにある金属製のザルを用意する。また、センサの動作を確認するために、静電気モップ(100円ショップのはたきでOK)なども用意して欲しい。
電源スイッチをONにすると、バッテリ残量が緑のLEDで表示される。電池は1ヵ月連続使用が替え時の目安ということ。さらに長時間、安定させてデータを取る場合は、5V(直流)1~2AのACアダプタを別途用意しよう。アキバなら秋月電子などで破格値で買えるはず。
調整が必要なのは、センサの感度を切り替えるスイッチ。1倍、5倍、10倍の切り替えが可能になっているので、とりあえずは感度を1倍にして動作試験をしてみよう。
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