Linuxの将来
前述したように、LinuxをPC用デスクトップOSとして見ると、Windows、Mac OS Xに比べるとわずかしか利用されていないのが現状だ。一方、サーバ用OSとしてはインターネット向け、あるいは小規模な部門内のローエンドサーバ分野では一定の地位を確立していると考えられる。
このほか、組み込み用途では低価格のネットワーク機器や、ネットワークストレージでの採用例が目立つ。また、HPC(High Performance Computing)の分野では、x86アーキテクチャのCPUを用いたクラスタコンピュータが主流となっており、その多くでLinuxが用いられている。こうしたそれぞれの用途において、Linuxが今後どのように展開するのかを考えてみたい。
デスクトップとしての進化
現状を見ても、グラフィックスアクセラレータを利用した3Dエフェクトを多用したデスクトップや、各種アプリケーションの充実など、Windows VistaやMac OS Xにも劣らない環境が揃っている。特に、これまで弱いとされてきたオフィス系のソフトウェアも、OpenOffice.orgの登場によって払拭された。
一方、昨年からネットブック、ネットトップと呼ばれる低価格のミニノートPCが流行している(写真1、写真2)。これらはその名前の通り、インターネットのサービスを利用することをおもな目的として、性能と価格を低く抑えたPCだ。ローコストを実現するためにLinuxをプリインストールしたモデルが先行した。こうしたこともあって、Linuxを手にしやすい環境は急速に整った。
現状のネットブック人気が続けば、海外を中心にデスクトップOSとしてのLinuxが徐々に普及する可能性はある。また、今後大きな市場になることが見込まれる新興国でも、導入コストが低いLinuxが使われるようになることは十分考えられる。
しかしながら、Linuxがデスクトップ用途で急速に普及するかというと、そうともいえない。前述のネットブックも、現在ではWindows XP Home Editionをプリインストールしたモデルが増えてきた。また、国内ではLinuxプリインストールモデルの需要が見込めないのか、ほとんどのメーカーがWindowsプリインストールモデルのみを販売している。海外ではLinuxモデルも併売されていることが多いのに対し、対照的といえる。
さらに、マイクロソフトの追撃も始まっている。ネットブック市場には「重すぎる」Windows Vistaをスキップして、軽量化したWindows 7を投入する構えのようだ。また、新興国に向けてWindowsを低価格で提供するプログラムもすでに展開している。Linuxがデスクトップとしてシェアを伸ばすかどうかは、ローエンドPCの標準OSになれるかどうかが鍵といえよう。
(次ページ、「サーバ用途での機能強化」に続く)
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