このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第82回

iPhoneのプッシュ機能で考えるモバイルの本質

2009年07月28日 16時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

プッシュでやってくることで情報環境が変わる

 iPhoneでケータイメールを扱うようになって変わった点は、メールアプリの着信音よりも大きく、はっきりと「メール着信」を知らせてくれることだ。ホームスクリーンに誰から、どんなメールが届いているかを確認できる点もありがたい。

 SMS/MMSを使い始めて、iPhoneのメールがプル型に寄っていたかを思い知らされる。他のアプリも同様だ。TwitterにしてもFlickrやYouTube、Safariなども含めて、すべて自分で情報を探して取りに行くプル型の情報端末だったのである。

 もちろんそれでも十分にウェブをポケットに入れる体験をしてきた。しかし、ケータイではできていて、iPhoneではできていなかったことがあったのだ。それがすなわちプッシュ型の情報取得で、そこに1年間も離れていたことに気づいたのだ。

 またiPhone OS 3.0にはケータイメール対応のほかにも、「Push Notification」というプッシュ型の情報手段が搭載された。これによりアプリ開発者は、Appleのサーバを通じて端末に対して新着情報などを通知して知らせることが可能になった。

プッシュの通知を設定1

プッシュ通知対応アプリを初めて起動したときに、プッシュ機能を使うかどうか聞かれる。OKすると通知が有効になる

プッシュの通知を設定2

設定メニューの中の「通知」でプッシュのON/OFFを設定できる。さらにアプリごとにどのような通知をするか確認も可能

 とりあえず今回の原稿を執筆するに当たって、そのプッシュ通知機能を利用した、「30min.おでかけ」アプリと「iTwitter」という2つのアプリを試してみた。

 まず30min.は、ブログやグルメサイトなどの情報を串刺しにしてエリア情報を調べられるアプリだ。初期はランチ検索からスタートし、現在はレストラン検索、レジャーや注目スポットの口コミ情報が表示できる。

 この30min.では起動時に位置情報を取得して、周辺の口コミ情報をすぐに表示してくれる。今回加わった新機能では、過去の位置情報計測の情報を元にして、そのエリアの新着情報をプッシュして知らせてくれる。

 たとえば赤坂で起動していた場合は、赤坂の新着情報がポップアップする。もしよく遊びに行く場所や職場の周辺で使っていれば、そのエリアの最新情報を通知してくれるのである。ちょうど、自分が好きな街で起きたニュースを街が知らせてくれるようなものだ。場所とのコミュニケーションをしているような、そんな新しい感覚が味わえる。

 Twitter用クライアントのiTwitterでは、iTwitterのユーザー同士に限られているが、自分宛のダイレクトメールやリプライがあるとiPhoneの画面に通知してくれる。

 Twitterは「5分間のメディア」と言われているほど、情報が次々に流れては古くなっていく。そのTwitterにおいてプッシュでリプライを通知してくれる機能は、本来非同期もしくは微同期のコミュニケーションメディアであるTwitterを限りなく同期メディアに作り替えてくれるほどのインパクトを感じさせてくれた。

 もともとウェブ上のサービスであった30min.やTwitterを、PCではなくiPhoneで利用することは、ウェブの「場所からの開放」を実現した。しかし今回のプッシュ対応は、ウェブのその次の段階、「時間からの解放」と言えるかもしれない。

Twitterのつぶやきがプッシュで通知された

iTwitterのリプライを受信した際のプッシュ通知。「表示」ボタンを押すとiTwitterが開く。ちなみに起動中のクライアントはTweetie

 今回紹介したアプリは、ウェブのサービスが最適なタイミングで直接情報を送り届ける手段を持つことを示している。それがiPhoneのプッシュ対応なのである。

 どんな情報をプッシュで受け取るか、いらない情報をいかに受け取らないか、あるいはいかにして新しい情報と出会うかなど、さまざまなメディア実験が今後待っている。

 これらの問いにはまだ正解があるわけではない。ぜひ読者の皆さんも、自分の心地よいプッシュによる情報環境について、考え、試してみてほしい。コンシューマーレベルでの実験が新しい情報環境へのニーズを作り、また安心して使えるテクノロジーの姿を形作ると思うのだ。

筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET


前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

最新記事

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン