複数の回線を束ねるリンクアグリゲーション
2台のスイッチ間を複数のケーブルでつなぎ、スイッチ間の高速化を図る技術を「リンクアグリゲーション」または「ポートトランキング」という。IEEE802.3adとして規格検討が始められ、現在は標準化が完了しIEEE802.3内のClause 43 Link Aggregationにその仕様を見ることができる。
束ねられた複数の物理リンクは、上位プロトコルには1つのリンクとしか見えず、さらに束ねた物理リンク内で障害が発生しても他のリンクへトラフィックが振り分けられ、通信を継続できるという冗長性も備えている。
仕様上、リンクアグリゲーションを適用できるのは全二重通信かつポイント・ツー・ポイントの接続に限られている。利用されるシーンはおもにトラフィックの集中する部分なので、制約となることはないだろう。
リンクアグリゲーションの構成と仕組み
さて、リンクアグリゲーションの構成と仕組みについて見てみよう(図5)。
リンクアグリゲーションはIEEE802.3の機能階層では、「リンクアグリゲーション副層」と定義されているIEEE802.3のオプションの1つである。いわゆる「シム副層」(シムはくさびの意)と呼ばれる副層で、媒体アクセス制御(MAC)とMACクライアントインターフェイスの間にくさびを打ち込むような形で置かれる。ここでMACクライアントといっているのはMAC副層の上位層の意味で、一般的なMACフレームの送受信を行なう機能だけではなく、タグVLANやスパニングツリーなどIEEE802.1のブリッジ機能も、MACクライアントという位置付けである。
リンクアグリゲーション副層の主要機能は「集約制御」と「アグリゲータ」である。
集約制御はLACP(Link Aggregation Control Protocol)を使って、自分自身のリンク集約に関する情報と相手から受信した相手の情報を定期的に交換し、リンク集約を管理している部分である。実際にLACPでやり取りされる情報は最新の管理情報であって、コマンドを発行して何かをやらせる要求と応答という形のプロトコルではない。互いに管理している情報を交換することによって、集約されているリンクの状態や新たに集約できる可能性のリンクを把握することに使われる。このプロトコルで交換した情報により、アグリゲータと物理ポートが対応付けられる。
MACクライアントからのトラフィックを扱うのはアグリゲータという機能である。MACクライアントと物理リンク間のインターフェイスとなる論理的な存在で、複数の物理リンクをMACクライアントに対して1つのリンクに見せている部分だ。
アグリゲータの内部を見ると、トラフィックを送信する「ディストリビュータ」とトラフィックを受信してMACクライアントへ渡す「コレクタ」で構成されていて、ディストリビュータには物理ポートへトラフィックを分散させる分散機能が含まれる。ディストリビュータが物理ポートへ分散するのはMACフレームではなく、「対話(同じ宛先に送信されるMACフレーム群)」である。
(次ページ、「ネットワークにつなぐ前の認証IEEE802.1X」に続く)
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