また読者を煙に巻く3文字略語で恐縮だが、「ADC」という用語をご存じだろうか。ADCとはApplication Delivery Controllerの略で、直訳するとアプリケーション配信制御を意味する。ここでは日本法人が設立されたA10ネットワークスの製品を中心にADCについてレポートしていきたい。
ADCという製品の知名度が上がってきた?
ADCという用語はわからなくとも、F5のBIG-IPみたいなやつといえば、イメージが沸くのではないだろうか? サーバとユーザー間で通信に仲介し、パフォーマンスやレスポンスを向上させたり、セキュリティを強化するという役割を持っている。
ADCの代表的な機能は複数サーバに処理を振り分けるロードバランシングが挙げられる。しかし、ADCを名乗る製品はロードバランシングのみではなく、コンテンツの圧縮やキャッシング、プロトコルの最適化、SSLアクセラレーション、簡易なファイアウォール、QoS(Quality of Service)など実に数多くの機能を持っているのだ。こうしたADCの代表的な製品が、冒頭にも述べたF5ネットワースの「BIG-IP」というわけだ。
もともとADCは、調査会社のガートナーが専用のロードバランサを含む総合的なトラフィック管理装置を指す用語として作ったようだ。それ以前には「アプリケーションスイッチ」とか、「L4/L7スイッチ」という用語もあったのだが、ハードウェア処理を前提するスイッチとは異なり、ソフトウェアベースの製品も多いため、ADCという用語が用いられたと推測される。最近ようやく記者発表会などでもよく使われるようになり、今回のInteropの会場でも多くの製品が展示されていた。
日本法人も設立されたA10の新ADC
A10ネットワークスは、40Gbpsという高速なスループットを誇る「AX5200」を展示した。A10ネットワークスは、ID管理と帯域制御を併せ持つ「IDsentries」やロードバランシングに留まらない多彩な機能を持つADC「AXシリーズ」を手がけるアプライアンスベンダー。米国法人と販売代理店である三井物産との共同出資で、先頃日本法人が設立されたばかりだ。
AXシリーズは「ACOS」という独自OSによる並列処理技術とASICの組み合わせにより、高いパフォーマンスを実現するADC。「2倍の性能を半分の価格で」というキャッチで、コスト訴求もアピールしている。また、IPv6への対応や「aFlex」と呼ばれる独自のスクリプティング言語の提供、あるいは基本的にオプションなしで、全製品で共通機能を搭載するのを売りにしているあたり、BIG-IPをかなり意識した製品といえる。
今回展示されたAX5200は6月9日に発表されたばかりのAXシリーズのハイエンドモデル。2U筐体に10GbEポート×16、1GbE×4というポートを搭載し、毎秒300万のレイヤ4コネクションという高いパフォーマンスを実現している。最大680Wという低い消費電力も売りとなっている。
また、エントリモデルの「AX1000」も展示されていた。こちらは1Uサイズでありながら2.4Gbpsのスループットを誇る。最大消費電力も158Wと低い。
その他、F5ネットワークスはもちろんブロケード コミュニケーションズ システムズやバラクーダネットワークス、SIIなどがADCやロードバランサを披露。今回参加のなかったベンダーも併せると、実はかなり数多くのベンダーが市場にひしめいており、今後も各ベンダーの動向に目が離せない。
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