Xeon 7000シリーズ
さて、最後がMP向けのXeon 7000シリーズである。Xeonファミリーの中でラインナップが一番迷走しているのが、このMP向けである。
最初に述べたように、MCMのプロセッサーを使うと従来のバスではMP構成が取れなくなる。そのため、Pentium 4(のデュアルコア版Pentium D)をベースにシングルダイ化を計ったのが、「Xeon 70xx」(Paxville-MP)で、これに最大16MBもの3次キャッシュを搭載したのが「Xeon 71xx」(Tulsa)シリーズである。
このTulsaがリリースされたのは2006年8月。つまりCore 2アーキテクチャーベースのXeon 51xxがリリースされた「後」になる。リリースされたばかりのTulsaを無視してCore 2アーキテクチャーを持ってくるわけにもいかなかったので、結局Core 2アーキテクチャーのXeon MP製品は、まるまる1年遅れる事になった。それが図にある「Xeon 7200」(Tigerton-DC)と「Xeon 7300」(Tigerton-QC)である。
実はこのTigertonは、言ってみればピンチヒッター。本当はTulsaの後継として、「Whitefield」と呼ばれるCPUが開発されていた。このWhitefieldはCore 2アーキテクチャーをベースにしていた“らしい”が、FSBに代えてQPIをいち早く採用するなど意欲的な構造だったが(WhitefieldのQPI Linkと現在のQPIが同一かどうかは不明)、最終的に開発中止となってしまった。その結果、Tulsaの後継CPUがなくなってしまったので、急遽Woodcrest/Clovertownをそのまま持ってきたのがTigerton、ということになる。
しかし、これに続く「Dunnington」シリーズは、本格的なものになっている。ベースになるのは45nm世代のCore 2「Wolfdale-DP」の2次キャッシュ3MB版。これを2つ(4コア)ないし3つ(6コア)と、最大16MBの3次キャッシュを1チップ構成としたのがDunningtonとなる。6コアの「Dunnington-Hex」の場合、ダイサイズは503mm2、総トランジスタ数19億個というなかなかのモンスターチップである。リリースされたのは、Xeon 72xx/73xxの1年後となる2008年9月のことである。
これらに続く製品として、すでにインテルは「Nehalem-EX」の存在を明らかにしている。ベースとなるのはNehalem/Nehalem-EPだが、コア数は最大8で、最大24MBの3次キャッシュを搭載し、QPI Linkを4チャンネル備えるという巨大なものになる。標準で8プロセッサーまでの構成に対応しており、飛躍的に大規模なシステムを構築できることになる(9プロセッサー以上のシステムは、OEMベンダーがそういうチップセットを作れば可能、という話)。
このNehalem-EXの登場時期は2009年後半とされており、9月あたりが怪しいと思われる。おそらくは、9月22日から米国サンフランシスコで開催予定の開発者向け国際会議「IDF 2009」の時期に、搭載製品と一緒に発表、というあたりだろう。型番も不明だが、Nehalemアーキテクチャーがいずれも“x5xx”とつけていることから、「Xeon 75xx」となるのではないかと思われる。ちなみに、Nehalem-EXの現時点での資料には「最大8コア」とあるので、6コアの製品もあるかもしれない。
MP向けプロセッサーも、2010年後半には32nmプロセスのWestmereベースになることが発表されている。おそらくは同じインターフェース構成で、コア数は最大12個程度まで搭載可能になると思われる。登場時期はやはり、2010年の9月とかそのあたりではないかと筆者は推測している。
今回のまとめ
・サーバー向けプロセッサーは、1プロセッサー向けの「Xeon UP」、2プロセッサー向けの「Xeon DP」、4プロセッサー以上向けの「Xeon MP」の3ラインナップ。
・バス構造の問題で、Xeon MPは近年迷走していた。QPIで解決に向かう。
・Xeon UPは「Xeon 3500」番台、Xeon DPは「Xeon 5500」番台でNehalemアーキテクチャーに移行した。
・Xeon MPは「Nehalem-EX」でNehalemアーキテクチャーに移行の予定。時期は2009年後半。
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