Intelチップセットの歴史 その9
Nehalem世代で大きく変わったサーバーチップセット
2010年02月15日 12時00分更新
今回も引き続き、サーバーおよび組み込み向けチップセット解説の後編である。今回は一部の内容が37回と被ることを、あらかじめお断りしておく。
FSBを脱却しQPIへ 4年もの道のり
前回も説明したとおり、1プロセッサー構成のデスクトップやノートはともかく、2プロセッサー構成以上が想定されるサーバー用途では、共有バス方式のFSBはもはやお荷物以外の何者でもなくなりつつあった。対するAMDはいち早く「K7」(Athlon)で共有バスを捨てており、さらに「K8」(Athlon 64)では、「HyperTransport Link」というPoint-to-Point方式の新たな高速リンクを採用することで、マルチプロセッサー接続の拡張性を十分に確保する方策をとっていた。
インテルもそんなことは昔からわかっていて、もっと早くに新しい接続方式を導入する予定があった。インテルの場合、Xeonに加えてハイエンドにはIA-64、つまりItanium系列の製品もラインナップされており、このXeonとItaniumを同一の接続方式とすることでチップセットを共通化しよう、という目論見だ。これがうまく行けば、「メインストリームはXeon、ハイエンドはItanium」という形で、うまく棲み分けができた可能性もあった。
これに向けて、Itaniumは「Tukwila」、Xeonは「Whitefield」というプロセッサーと、これにあわせてItanium向けには「Bayshore」、Xeon向けには「Reidland」というチップセットがそれぞれ予定されていた。ところがこれらは2005年夏頃に相次いでキャンセル。Tukwilaのみ残ったものの、内容は大幅に変わったようで、しかも出荷はようやく最近※1である。
※1 一番最初の予定では2007年頃という話だったが、QPIを利用するように変更されて2008年末に出荷が公式にアナウンスされる。ところがその後2回の出荷延期が発表されて、2月9日にようやく「Itanium 9300番台」として発表。OEMベンダーに出荷が始まった。
このWhitefield世代の接続方式がどんなものだったのかは、一切情報が出てこないのでなんとも言えない。だが結果としてインテルは、一から新しいインターコネクト技術を開発する羽目になったようで、これが「QPI」として世に登場するまで、まるまる4年掛かった事になる。
ちなみに、よく「AMDの方式をインテルが真似た」的な発言を目にするが、QPIやAMDのHyperTransport Linkに代表されるPoint-to-Pointの接続方式そのものは、昔から計算機科学の分野で研究されつくした方式だった。メモリーコントローラーをCPUに統合するのも同じことである。商用プロセッサーにこれらの技術を採用したのも、IBMの「Power4」の方が早い(計画だけで言えば、旧DECの「Alpha EV7」もこれに近い構成を予定していた)から、AMDが先駆者とは必ずしも言いにくい。単にPC向けプロセッサーに最初に導入したのがAMD、というのが適当であり、真似というのであればどちらもPower4の真似ということになる。
強いて言えば、シェアもラインナップも乏しいがゆえに、互換性を考えずに新しいインターコネクト技術を投入できたAMDと、互換性やアップグレードパスを考慮する必要があったがゆえに、なかなか新しいインターコネクトを投入できなかったインテル、というあたりだろう。
この連載の記事
-
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 -
第757回
PC
「RISC-VはArmに劣る」と主張し猛烈な批判にあうArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第756回
PC
RISC-Vにとって最大の競合となるArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第755回
PC
RISC-Vの転機となった中立国への組織移転 RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第754回
PC
インテルがCPUの最低価格を82ドルに引き上げ、もう50ドルでは売れない製造コスト問題 インテル CPUロードマップ - この連載の一覧へ