企業のITを支える見えないインフラ
企業のITシステムには、ユーザーにも見える部分だけでなく、バックボーンネットワークやサーバルームなどのように目に見えない部分がある。目に見えない部分は家庭における電気・ガス・水道と同様に、企業ITにおける「インフラ」であり、正しく機能している限りは、ユーザーからその存在を意識されることはない。しかし、ひとたびトラブルが起きてネットワークが使えなくなれば、管理者に大量のクレームが寄せられることになる。
システムのトラブルによる予期せぬ業務の停滞は「機会損失」であり、許容できるものではない。そのため、バックボーンネットワークやサーバルームには、止めないためのさまざまな仕組みが用いられる。基本的な考え方は、SPOF(Single Point of Failure)、すなわち「その部分に障害が発生すると、システム全体に影響を及ぼすような部分」をなくすことにある。
サーバの主流はIAサーバ
現在、主流となっているのはx86系プロセッサを用いた「IAサーバ」であり、WindowsやLinuxといったオープン系OSが用いられる。大量のサーバを効率的に設置できるように、薄い筐体のラックマウント型や「シャーシ」に小型のモジュールを組み込んで利用するブレードサーバといったフォームファクタが一般的だ(図1)。特にブレードは、電源やネットワークなどケーブル配線の本数を減らすことができるため、設置や管理の手間を低減できるなどの利点があり、多くのサーバを利用する場合の主流となっていくと思われる。
一般的なパソコンと同様のx86系プロセッサを用いているとはいえ、サーバには信頼性向上のためにさまざまな仕組みが投入されている。
サーバに搭載するプロセッサは、エントリークラスが1ソケット、ミドルレンジが2ソケット、ハイエンドでは4ソケット以上という分類が一般的だったが、複数のコアを搭載したプロセッサの普及により、この分類も変化してきており、1ソケットでもミドルレンジ相当の拡張性を備えた製品が登場しつつある。また、豊富なプロセッサリソースを活かすため、仮想化の仕組みを用いて、複数のサーバ機能を1台のハードウェア上で利用するといったことも行なわれている。
サーバではメモリモジュールにバッファ機能を持たせることで、大量のメモリを搭載した場合でも安定して動作するようになっている。またエラー訂正機能により、データの誤りが発生してもシステムが停止しないようにする工夫も盛り込まれている。
電源については、1台のサーバに複数の電源を搭載して冗長化したり、ブレードサーバのように複数のサーバ間で共用したりすることで、可用性の向上と電力利用の効率化が図られている。
HDDについては、クライアントPCでも利用されているシリアルATAインターフェイスの製品以外に、SAS(シリアル・アタッチドSCSI)のものや、高回転型で転送速度の速いものも搭載されているが、次に述べるSANなども利用されている。
(次ページ、「SAN Storage Area Network」に続く)
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