8月7日から11日、米国サンフランシスコでMacの世界開発者会議“WWDC 2006”が開催された。イベントの冒頭で行なわれた基調講演では、次期Mac OS X“Leopard(レパード)”の詳細が明かされたが、それと並んでもう1つ大きな発表があった。Intel Macのフラグシップモデルである『MacPro』の発表だ。
すでに詳細な仕様は公式ウェブページで公開されており、ASCII24でもベンチマークやマザーボードの撮影などを行なってきた。ここでは改めて、この機種が米アップルコンピュータ社のビジネス上、どういう位置づけにあるのかを基調講演から読み取っていこう。
人気急上昇中のMac、75%はインテル版
米アップルのCEO、スティーブ・ジョブズ氏は、まず昨四半期のMacの売り上げが同社史上最大だったことに触れた。出荷台数は133万台で、パソコン全体の売り上げは7%ほどしか伸びていないのに、Macの売り上げは17%ほど伸びていると語った。
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2006年第3四半期における売り上げは、パソコン全体では7%アップしたのに対して、Macでは17%ほど伸びた |
ジョブズ氏は「つまり、我々のマーケットシェアが伸びているということだ」と続ける。特に売れていたのが“MacBook”シリーズで、1月時点での米国ノートパソコン市場におけるアップルのシェアは6%だったが、4月にMacBookが発表された後は急速に伸び、6月頃には倍の12%にまで達した。
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普及価格帯のノートパソコンであるMac Bookの登場で、米国のノートパソコン市場におけるアップルのシェアが12%まで伸びた | MacBookの爆発的ヒットもあり、史上最大のMacの売り上げのうち、実に75%がIntel Macという結果になったが、来期はこれが100%に変わりそうだ |
ジョブズ氏は「われわれの製品はただ1機種を除いてすでにほとんどインテル仕様に切り替わった。その1機種とはPower Macだ」と語り「今日、Power Macは歴史に変わる」と付け加えた。
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「今日、Power Macは歴史に変わる」 |
アップルが1994年以来発売してきたデスクトップシリーズ“Power Mac”はこの日、12年の歴史に幕を閉じたーーこれに替わる新時代のフラグシップマシンを発表したのはワールドワイドプロダクトマーケティング担当上級副社長のフィル・シラー氏だった。
CPUには“Woodcrest”を搭載
「このエキサイティングな新製品を発表する栄光を授かってとてもうれしく思っています。新しいMac Proを発表します」ーーシラー氏はそう言って壇上に現れた。
彼が「これは、ハイエンドユーザーが夢にまで見ていた製品です。CPUはインテルの“Xeon(ジーオン)”チップセットです。Xeonの中でも最新のもので一般に“Woodcrest(ウッドクレスト)”と呼ばれているCPUです」と語ると、会場から喝采がわき起こった。
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Woodcrestは、最新の“Intel Core 2”というマイクロアーキテクチャーを採用し、CPUの核が2つある“デュアルコアCPU”の仕様。動作速度は最大3GHzで、4MBの共有型メモリーと128bitのベクターエンジンを搭載している |
シラー氏は「しかし、ハイエンドのユーザーにとってさらに重要なのは、これが64bit CPUだということでしょう」と前置きし、同CPUの魅力は「ほかのインテル製CPUと同様に、極めて優れたパフォーマンス/ワット(消費電力あたりの性能)を発揮すること」だと語った。
アップルは2005年のWWDCで、インテルCPUへの移行を果たした最大の理由について、「2006年時点のCPUロードマップを見ると、インテルのCPUがもっとも優れたパフォーマンス/ワットを発揮しているからだ」と説明していた。
シラー氏はXeonのパフォーマンス/ワットを、PowerPC G5や、競合製品にあたる米Advanced Micro Devices(AMD)社の“Opteron(オプテロン)”と比較してみせた。
グラフではOpteronはPowerPC G5の1.5倍程度、これに対してXeonはPowerPC G5の3倍以上の値を示していた。このように「最新のXeonは、圧倒的に優れたCPUだが、Mac Proシリーズは「このXeonを2つも搭載」するのだという。
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PowerPC G5/Opteron/Xeonの3つのCPUでパフォーマンス/ワットを比べたグラフ |
Power Mac G5の2倍のパフォーマンス
それではMac Proそのものの実力はどうなのだろう。シラー氏はこれまでのPower Mac G5の最上位モデル『Power Mac G5 Quad』とMac Proの性能を比較した。
まず基本演算性能では、整数演算で2.1倍、浮動小数点演算で1.6倍の性能を発揮するという。シラー氏は、Mac ProはPower Mac G5と比べてだいたい2倍程度速いと総括している。
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Mac Proの処理能力は、Power Mac G5と比べてだいたい2倍程度 |
では、これは実際にアプリケーションを使うとどのくらいの差になるのだろう。シラー氏は、さまざまな業種のプロフェッショナルが使うソフトのパフォーマンスを比較し、Mac Proのほうが1.4~1.8倍ほど速いことを明らかにした。
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Mac OS Xの開発環境『Xcode』、3Dグラフィックソフト『Modo』、音楽制作ソフト『Logic Pro』では1.8倍、ビデオ編集ソフト『Final Cut Pro』や医療用画像ビューアー『Osirix』でも1.4倍は速いという結果だった |
速いのはCPUだけが理由ではない。2つのCPUは1.33GHzのフロントサイドバスで接続されており、秒間最大21GB/秒でデータをやりとりできる。また、メモリーは4チャンネル/256bit/667MHzという仕様で、最大16GB/秒のデータをやり取りできるという。
だが、Mac Proの仕様で、もっとも大きな喝采を浴びたのはHDDを4台、最大2TBまで内蔵できることだ。シラー氏は「Xeonプロセッサーは消費電力あたりの性能が高いため、冷却機構を簡素化できると語り、そのおかげで筐体内にゆとりができた」と話す。同じゆとりを生かして2つめの光学式ドライブを追加することもできる。
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Power Mac G5より冷却機構が簡素化され、筐体内にゆとりができたおかげでHDDを4台まで内蔵できるようになった | 正面と背面のI/Oポート類も大幅に増強した。特に重要なのはダブルサイズ(2スロット)のグラフィックカードにも対応したことだろう |
