パソコン内蔵用の記録型Blu-rayディスクドライブ『LF-MB121JD』(中央)と、BD-Rディスク(左)、BD-REディスク | Blu-rayディスクプレーヤー試作機によるBDビデオのデモ映像。映像の上に表示されたメニューはJavaで作られている |
松下電器産業(株)は21日、パソコン内蔵用のBlu-rayディスク(以下BD)ドライブ『LF-MB121JD』を6月10日に発売すると発表した。同時に書換型BD(以下BD-RE)2種類と追記型BD(以下BD-R)2種類の記録メディアも発表された。いずれも価格はオープンプライス。LF-MB121JDの予想実売価格は10万円前後。月産台数は1万台を予定する。
記録型のBDは片面1層で25GB、2層で50GBの記憶容量を持つ相変化型光ディスクである。DVD-R同様の追記型であるBD-Rと、DVD-RW同様の書換型BD-REの、2種類の記録メディアが用意されている。LF-MB121JDはBD-R/REの双方に記録が可能で、2層式ディスクを使えば最大50GBのデータ記録が可能となっている。またBD記録/読み込み用の光学系に加えて、DVD用とCD用の光学系(2レーザー/1レンズ)も搭載しており、DVD±R DL対応DVDスーパーマルチドライブと同等の記録/読み込みが可能だ。そのため本機が対応するディスクメディアは13種類にものぼり、生産を担当するパナソニック四国エレクトロニクス(株) デバイスインダストリー事業グループ ストレージプロダクツビジネスユニット ビジネスユニット長の中矢一也氏は、「HD DVD以外のすべてに対応する」との言葉で、幅広いメディアに対応する特徴を説明した。なおBD-ROMについては触れられていないが、これについてはまだ未登場のためとのこと。
LF-MB121JDが対応するディスクメディア。DVD±R DLにも対応するので、既存ドライブの置き換えにも十分利用可能だ |
製品は一般的なパソコン内蔵用のトレイローディング型ドライブで、インターフェースにはATA/ATAPI-5/ATAPI-6(パラレルATA)を採用する。対応OSはWindows XP Home Edition/Professional/x64 EditionおよびWindows 2000 Professional。ドライバーソフトも付属する。また6種類のアプリケーションソフトが付属しており、うちDVD/CDライティングソフト『Power2Go 5』とバックアップソフト『PowerBackup』は、BDへのデータ記録に対応している。ドライブ自体の対応ハードウェアは、CPU Pentium III-700MHz以上(1GHz以上推奨)、メモリー128MB以上、画面解像度1024×768ドット以上などとなっている。その他の主な仕様は以下のとおり。
- アクセスタイム
- BD-R/RE 210ms、DVD-ROM 170ms、DVD-RAM 220ms、CD-ROM 160ms
- 連続データ転送速度
- BD-R/RE 2倍速(9MB/秒)、DVD±R 最大8倍速、DVD±R DL 最大4倍速、DVD+RW 最大8倍速、DVD-RW 最大4倍速、DVD±RAM 最大5倍速、DVD-ROM 最大8倍速、CD-R 最大24倍速、CD-RW 最大16倍速、CD-ROM 最大32倍速
- バッファー容量
- 8MB
- サイズ(W×D×H)
- 146.0×190.0×41.3mm
- 質量
- 約985g
- 消費電流
- 最大1.4A(+5V)/最大1.5A(+12V)
BD記録に対応する2種の付属アプリケーションのうち、Power2Go 5はBD-R/REへのファイル書き込みが、PowerBackupはファイル/ディスクバックアップの書き込みが可能とされている。また付属のドライバーソフトを組み込むだけでも、ファイルのドラッグ&ドロップによるBD-Rへの記録が可能になる。BD-R/REを使ったDVDあるいはBD形式のビデオディスク作成はできない。現時点ではあくまで、大容量光ディスクとしての利用に止まる。当然ながらBDのビデオタイトルを再生するためのパソコン用アプリケーションソフトも付属しない。
ドライブは3月にOEM先向けにサンプル出荷を開始しており、同日には(株)アイ・オー・データ機器からも同じドライブを採用した『BRD-AM2B』などが発表されている。またデスクトップパソコン向けのハーフハイト型だけでなく、ノートパソコン搭載に適した厚さ12.7mmの薄型BDドライブ(スリムトレイタイプおよびスリムスロットタイプ)も、出荷を開始しているという。なおLF-MB121JDとスリムスロットタイプはパナソニック四国エレクトロニクスで、スリムトレイタイプはパナソニック コミュニケーションズ(株)で生産される。
参考出品されていた、ノートパソコン内蔵用スロットインタイプBDドライブ『UJ-215』。厚さは12.7mmでインターフェースはATAPI | 同じくスリムトレイタイプのノート内蔵用BDドライブ『UJ-210』。ちなみにいずれもBD-R/REの記録速度は1倍速(4.5MB/秒) |
大容量とハリウッドの広い支持のアドバンテージをアピール
松下電器産業 デジタルネットワーク・ソフトウェア担当 役員の津賀一宏氏 |
発表された製品はあくまでもパソコン用の記録型ドライブであり、注目の集まっている民生用再生機や再生専用ドライブではない。東京都港区の同社ビルにて開かれた報道関係者向けの発表会では冒頭でこの点を強調しつつも、最初に登壇した同社 デジタルネットワーク・ソフトウェア担当 役員の津賀一宏氏は、同社のBD戦略として競合のHD DVDに対するBDの利点や状況についての説明を行なった。
津賀氏はBDがHD(ハイデフニション)映像技術をつなぐメディアであると位置づけたうえで、規格化進行状況の比較表で、HD DVDは記録型ディスクの仕様が確定していない点を指摘して、再生機で先行するHD DVDに対して後れをとってはいないとした。さらに家電メーカーからIT産業、映画業界やゲーム業界に幅広い支持を獲得している点を挙げて、「メジャーどころで81%までBDのサポートをいただける。ほぼどの映画もBDで見ることができる状況まで来た」と述べた。
BDとHD DVDの規格化状況を示した表。HD DVD-RWのファイルシステム仕様がまだフィックスしていないとしている | 米国の主要映画配給会社が、どの次世代ディスクに対応するかを示したグラフ。BDのみサポートが49.1%、両サポートが31.9%など、8割近くの映画配給会社がBDをサポートするとしている |
またBDの分かりやすいメリットである記憶容量については、高品質の映像(MPEG-2またはMPEG-4 AVC)とマルチチャンネルオーディオ(リニアPCM)などで映画をエンコードした場合に必要な容量の式を示したうえで、長編映画になると40GB以上の容量を必要とすること挙げた。また「高品質のままで入れたいのが主要な(映画)スタジオの要請」とも述べて、2層30GBで十分とするHD DVDの主張を否定した。
リッチな映像と音声を備えたコンテンツに必要な容量を示して、BDの記憶容量の利点をアピール。松下電器は米国のパナソニック・ハリウッド研究所でMPEG-4 AVCによる高画質エンコード技術を開発しており、その優れた映像品質は高い評価を受けている |
このほかにも、Javaで作成されたBDビデオ上のメニュー操作(登場人物名を検索し、その登場シーンに移動する等)のデモを披露したほか、著作権保護技術やBDの量産技術などについての説明も行なわれた。ディスク表面から記録層までの厚みが0.1mmと薄いBDは、製造に高度な(そしてまったく新しい)設備が必要であり、設備コストや生産歩留まりの不安などが、HD DVD側から攻撃されることも多い。松下電器はBDの製造に、熔けた紫外線硬化樹脂をディスク表面に垂らしてディスクを回転させ、遠心力で広げて極薄のカバー層を作る“スピンコート工法”を用いる。説明会ではスピンコート工法でのBD製造の様子や、その技術的特徴をビデオにて説明し、技術面での不安がないことをアピールした。今回発表されたディスクメディア4種は、合計で月産5万枚の生産予定とされている。ただしディスクの製造歩留まりについては、数字等でのコメントはされなかった。