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野村総研、中国市場の動向と日本企業の戦略を分析

2004年07月07日 22時38分更新

文● 編集部 小板謙次

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(株)野村総合研究所(以下、野村総研)は7日、中国市場の動向と日本企業の課題および流通サービス市場について、報道関係者を対象とした説明会を行なった。

■加熱業種に対して新規融資を抑制

アジア・中国事業コンサルティング部上級コンサルタントの此本臣吾氏は、中国市場のマクロ的な動向について解説した。此本氏によると、中国は現在投資加熱が全国規模で拡大しており、2004年の第1四半期には43%もの名目固定資産投資の伸びが見られたと紹介した。この名目固定資産投資は企業投資、公共投資、そのほか不動産投資などが含まれている。この背景には都市部での不動産ブーム、外資企業の工場建設ラッシュ、原材料・電力などの能力増強投資、金融引締め前の駆け込み投資などが要因となっている。駆け込み投資については、2003年以降の加熱する投資に対して金融引き締めが行なわれるだろうと言われていたため、それに対応した投資と分析した。

投資加熱が全国規模で拡大中
投資加熱が全国規模で拡大中。2004年の第1四半期には43%もの名目固定資産投資の伸びが見られた

しかし、実際には中国政府は経済全体を冷やすというのではなく、ピンポイントで行政指導を行なっていくという傾向がみられる。「これまではGDPがすべて、成長さえすれば良しという方針だったが、この状況になってその中身が重要だという風に変わってきた」と氏は指摘し、過熱業種に対して新規融資を抑制したり、何らかの窓口抑制をしたりという傾向がみられるという。

大胆に言ってしまえば、中国には2つの経済がある
「大胆に言ってしまえば、中国には2つの経済がある。“海の中国”つまり市場経済の恩恵をフルに享受している地域、そしてそれから取り残され未だに計画経済的な運営が行なわれている“山の中国”。“海の中国”の発展は“山の中国”に公共投資という形で再分配される。また、“海の中国”で成長してきている企業が“山の中国”のマーケットをねらって投資を行なっていく。これらの関係がうまく回転している

■マクロ的にみればポテンシャルが高い中国市場

また2008年に開催予定の北京五輪と2010年に開催予定の上海万博といった2大イベントについても言及された。北京五輪は1.5兆元(約20兆円)の市場規模と言われているが、恩恵をうけるのはインフラや不動産関係に集中し、日本企業とっては大きなインパクトを与えないだろうとした。一方で上海万博は北京五輪と違い、上海の長江デルタ地域が先端地域としてクローズアップするものになるため、インフラだけではなくさまざまな先端的な製品や行政サービスを導入しようという動きがある。こちらの方が幅広い業種にビジネスチャンスを提供するというところがあると話した。

中国五輪は市場規模は大きいが日本企業には大きなインパクトは与えない
中国五輪は市場規模は大きいが日本企業には大きなインパクトは与えない

また、現政権の政策の視点からも分析がなされた。「内陸開発は前政権のひとつの目玉だったが、実際はあまり思わしい効果があがってない。当初は日本企業にとってもいろいろなビジネスチャンスがあるのではないかと言われていたが、蓋を開けてみると一部の交通インフラ関連の企業に恩恵があった程度」とし、それに比べると現政権に東北振興政策はチャンスがあるという。「東北地域は昔からエネルギーが豊富で重工業中心に技術基盤もしっかりしていた。人材に関しても、良い大学があった。こういうポテンシャルがもともとはあるというのが内陸部とは大きな違い」。現地では日本への期待は強くもっており、参画のチャンスもあると見ているとした。

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