【エデュテイメントフォーラム2000京都 Vol.3】子どもの感受性を伸ばす教育を--パネルディスカッション“エデュテイメント産業の現在とこれから”
2000年04月03日 00時00分更新
京都府、京都リサーチパーク(株)、(財)京都産業技術振興財団で構成するエデュテイメントフォーラム2000京都実行委員会は25日、“エデュテイメントフォーラム2000京都”を京都市内で開催した。エデュテイメント産業の振興を目的に、教育関連の情報機器やソフトの展示、一般の親子が参加できるイベント、専門家によるセミナーといったプログラムを用意。27日の会期終了までに約1万4000名が会場に足をはこんだという。
ここでは25日に開催された、パネルディスカッションについてレポートする。パネルディスカッションのテーマは、“エデュテイメント産業の現在とこれから”。マンガ家であり、“マンガ学科”を担当する京都精華大学の教授、牧野圭一氏をコーディネーターに、教育用マルチメディアコンテンツの開発事業を行なっている(有)ヴォイス代表取締役の森川彬氏、同じくアーパ(株)代表取締役の中谷正一氏がパネリストとして参加した。
京都精華大学教授の牧野圭一氏 |
子どもの感受性を伸ばすような教育を
まず、森川氏はデジタルコンテンツに対し、「これまでなかった分野のものを作るのは古典を作るのと同じ。将来、よくあの時代にこんな作品ができたものだと思われるような作品を残したい」と語る。「自分がかかわっているIT業界はどうしても技術寄りになるため、文系、芸術系が入り込みにくい世界だと感じている。より良いコンテンツを作るには、技術よりも感性が重要だ」と述べている。以降は牧野氏の問いかけに中谷氏と森田氏が交互に答えるといったスタイルで進行した。
--デジタルとアナログの共有が必要と思うか
中谷氏「私はこれまでの創作活動で、コンピューターを“道具”ではなく“目的”と位置付けていたが、近年、重要なのはむしろ“シナリオ”だと思うようになった。これは、教育現場においても、同じことが言えると思う」
「コンピューターの使い方を教えることが重要なのではなく、それを使ってなにができるのかを教えることが重要であろう。アナログとデジタルの両面から子供の長所をサポートしてやることで、大きく成長できるのではないだろうか」
--しかし、コンピューターの授業といえば、操作を教えるものが大半ではないか
森川氏「コンピューター操作の部分、たとえばキーボードなどは高校以上でやればいいし、学校で勉強するより、親子で勉強する方が好ましい。ソフトの機能や使い方に深く立ち入らず、どういうことに使えるかを考える方が大切だ。むしろ、自然に触れるチャンスとか、子供たちの感受性を高めてやるような機会を増やすべきだろう」
ヴォイスの森川彬氏 |
コンピュータの世界では英語ができなければいけない?
--インターネットをはじめ、コンピューターの世界は英語が主流であり、英語ができなければいけないという風潮をどう思うか中谷氏「インターネット以前、ARPAネットが登場したころは英語しか使えなかった。しかし、インターネットが普及し、今では多くの日本語表示が可能なブラウザーが市場に出ている。日本語は非常に大切だし、残っていくものだと考えている。英語が主流なのは、インターネットの世界で主導権を握りたいというアメリカの戦略かもしれない。だが今後10年の間に、自動翻訳が可能となり、言葉の違いを感じなくなるだろう」
--インターネットが地域差をなくすと言われてきたが、現実には首都に集中している。その中で、地域だからこそできることがあるのではないか
森川氏「ローカルな文化でも、その意義や周辺情報などを地道に研究した上で紹介するのであれば、世界中で通用するコンテンツになる。あとは土地に対する思いがあるかどうかだ」
アーパの中谷正一氏 |
--将来コンピューターはどのようなデザインになるだろうか
中谷氏「例えば、足が悪い子供でもスポーツしているような疑似体験を提供するような、介護医療ロボットができるかもしれない。やがてはコンピューターが自分で判断してこなしてくれる時代になるだろう」
森川氏「米国の企業は、秘書的な役割を期待してOSを開発していると聞くが、日本で望まれているのは1つのことに優れた番頭のようなものだろう。究極的には、頭領のようなOSが登場するのを期待している。また我々技術者は、たとえ最先端の研究を行なっていたとしても、発想力が貧困である場合がある。マンガ家や子供の方がずっと進んだイメージを持っている。今自分にできることは、今ある技術でできるものを作り出すことだと考えている」