2008年の2月に刊行した『3Dキャラクタアニメーション Blender』に続く、Blender解説書の第2弾が12月22日発売の本書です。Blenderと言えば、モデリングやレンダリングからアニメーションまで行なえるオープンソースの3D統合ソフトですが、機能の強化や追加が頻繁に行なわれていることもあって、あまり知られていない機能も数多くあります。そういった機能のひとつが“物理シミュレーション”です。
物理シミュレーションというと難しい数式が出てきたりするので敷居が高いと思われそうですが、本書では、純粋な物理法則のシミュレーションを行なうというより、自然現象を3Dのアニメーションでどのように本物らしく見せるかといった、アーティスティックな面から解説しているのが特徴で、高度な内容を扱っていながら難しい数式は出てきません。
Blenderの基本的な操作を知っていることが前提ですが、付属CD-ROMに収録されているデータを使って、チュートリアルに従って操作すれば、これまでパソコンでは難しかった物理シミュレーションによるアニメーションを体感できます。
主な内容は、パーティクル(粒子)を利用した炎や毛髪、“ボイド”による鳥の群れ、ソフトボディを利用したスプリングや衣類、フルイド(流体)を使った小川の流れや水しぶきなどのシミュレーションですが、リジッドボディやラグドールのシミュレーションが行なえる“Bullet物理演算ライブラリ”も紹介しています。このライブラリの名前を耳にしたことがない方も多いと思いますが、PlayStation 3やXbox 360など最新の家庭用ゲーム機でも利用されている注目のライブラリです。そのほか、木や植物を作るためのツール類も紹介しています。
著者のトニー・マレン氏は、1971年アメリカ合衆国生まれ。オランダのグローニンゲン大学で自然言語処理の博士号を取得し、2005年からは津田塾大学で講師を務めています。専門は計算言語学。漫画家として仕事をしていたこともあり、趣味で16ミリ映画も制作しているそうです。翻訳者の小口博朗氏は、以前、弊社のMacPeople誌でマレン氏のBlenderの連載を担当されていた方で、現在は英国の大学でコンピューターサイエンス学科に在籍されています。
本書で身近になった物理シミュレーションを、ぜひ使いこなしてみてください。