筑波大学発ベンチャー企業、ソフトイーサ株式会社が、研究開発中の「PacketiX Desktop VPN Business」(パケティックスデスクトップVPNビジネス、以下「Desktop VPN Business」)のベータを公開した。
同社は、リモートアクセス用のVPNソフトウェア「DesktopVPN」を開発・提供してきた。同ソフトを企業内のシステムで利用できるよう改良、パッケージングしたのがこの「Desktop VPN Business」である。
「DesktopVPNを使っていただいているユーザーから、企業内で同様の機能を利用できるようにしたいという意見が多数寄せられた」と、開発を担当した同社の技術開発部 ネットワーク部門 清水超也さんはDesktop VPN Businessの開発のきっかけを話した。
Desktop VPN Businessは、「Desktop VPN Businessゲート」(以下ゲート)と「Desktop VPN Businessサーバー」(以下サーバー)、「Desktop VPN Businessクライアント」(以下クライアント)の3種のソフトウェアにより構成される。
管理者はあらかじめ、中継機能を持つゲートをインターネットから到達可能なコンピュータにインストールして設置する。その後、サーバーのインストールパッケージファイルを、設定済みのゲートからダウンロードし、リモートアクセスされるコンピュータにインストールする。
同様に、ゲートからクライアントのインストールパッケージをダウンロードして、コンピュータにインストールすると、そのコンピュータからゲートを経由して、サーバーをインストールしたコンピュータへリモートアクセスが可能になる。
特定のゲートを経由してリモートアクセスできるのは、そのゲートからダウンロードしたサーバーソフトとクライアントソフトを使った場合のみ。ほかのゲートで作成されたクライアントからはサーバーへのアクセスは不可能となる。このため、非常に安全なリモートデスクトップ環境を構築できる。
「Desktop VPNでは、IDとパスワードでセキュリティを確保していたが、企業レベルの利用でより高いセキュリティを確保したいと考えた」と清水さん。
また、ゲートにはWebUI機能が搭載され、各種情報の表示や設定変更をブラウザ上で行なえる。
「インストール作業や設定などの操作を可能な限り簡略化し、ユーザーの負担を軽減したい」と清水さん。これは、Desktop VPN Businessが利用されるシーンとして中小企業のオフィス、または企業の一部署であることを想定していることに起因している。「一般的に、企業レベルのルーターなどの設定には専門知識が必要だが、そこまでのスキルはなくても、ある程度のスキルで設定して利用していただけるレベルの使い勝手を目指す」と清水さんは続けた。
Desktop VPN Businessの大きな特長は、リモートアクセスされるコンピュータの電源を遠隔地から投入できる「Wake On LAN」機能を備えている点。
Wake On LAN機能によって、リモートアクセス先のコンピュータがスリープ、休止状態、シャットダウン状態にある場合、そのコンピュータの電源をオンにし、遠隔地からログイン可能な状態にできる。
「近年企業では、消費電力削減が大きな課題。Desktop VPNは遠隔操作されるコンピュータの電源を常時オンにする必要があったが、その点を改善し、不要な電力を消費することなく環境負荷を低減できる」(清水さん)。
Desktop VPN Businessの導入により、退社する際にしっかりパソコンの電源をオフにしたとしても、自宅からゲート経由でリモートアクセスし、必要なファイルにアクセスすることが可能となる。
清水さんとしては、「これまでDesktop VPNの利用を敬遠していたビジネスユーザーに積極的に利用していただきたい」とのこと。
今回発表された「Desktop VPN Business」のベータ版は、2009年3月31日まで無償で使用できる。正式版は2009年2月下旬にリリース予定とされているが、ライセンス形式や利用価格などは未定だ。 Desktop VPN Businessゲートの対応OSは、現時点でWindows XP/Vista。
なお、ベータ版の公開後も、ユーザーからのフィードバックなどをもとに改良が進められるという。今後リリースされるDesktop VPN Businessゲートには、「UPnPを使用したルーター設定変更の自動化」「ログ管理機能」、そして社内用に画面表示をカスタマイズ可能にする「ブランド化開発ツールキット」などが追加される予定だ。
