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世界企業パナソニック 90年目の決断 第7回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

「ideas for life」は経営理念の凝縮

2008年11月12日 10時04分更新

文● 大河原克行

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「ブランドプロミス」を制定

 そして、パナソニックは、ideas for lifeに基づき、「ブランドプロミス」を制定した。

9月16日のパナソニックブランドの白物家電事業会見で、大坪社長はブランドプロミスを紹介した

 パナソニックが果たすべき、“お客様との約束”ともいえるブランドプロミスは、「Panasonicが創るのは、くらしを輝かせる『アイディア』です。世界中の人々に明日のライフスタイルを提案し、地球の未来と社会の発展に貢献しつづけます」というものだ。

 古川総括部長は、「『くらし』と『アイディア』の言葉を入れることは、早い段階から考えていた。ここに、我々が果たすべき社会的役割である地球環境への取り組みなどの要素を盛り込んだ」と話す。

 実は、2003年の時点で定義されたものは、「全世界の従業員が開発・製造・販売・サービスを通じて、人々の豊かなくらしや社会の発展に、価値あるアイディアを提供し続けること」というものだった。

 「環境への対応が盛り込まれていないなど、21世紀型のブランドプロミスとはなっていなかった反省がある。創業以来のパナソニックが持つDNAに加え、グローバルに打って出るという会社の方向性、家まるごとの提案を行うことができる企業としての進化を盛り込み、一歩先の価値を提供できる企業の姿勢を示すものとして、新たなブランドプロミスを決めた」

 新たなブランドプロミスの候補は、実に100個以上にのぼったという。それぞれの言葉は、必ず経営理念と照らし合わせ、検討に検討を重ねた。その結果、生まれた言葉が新たなブランドプロミスとなったのだ。

 「ブランドプロミスの狙いは、創業者の理念をわかりやすく伝えること。大人から小さな子供まで、世界中のすべての人たちに、そして生涯に渡って価値を提供するという、空間と時間という双方から価値を提供する企業であることを盛り込んだもの」となっている。

 さらに、社員がプランドプロミスを実践する上で、常に心がけるべき価値として、「ブランドバリュー」が制定された。

 これは、対外的に公表するものではなく、いわば社員のための規範ともなる言葉だ。

 ここでは、「先進」、「洗練」、「信頼」という3つの言葉とともに、ベースとなる考え方として「eco(地球発想)」で構成した。

 先進では、「私たちは、時代の動きを敏感にとらえ、常に一歩先ゆくアイディアで、お客様の期待を超える新しい価値を創造しつづけます」とし、洗練では、「私たちは、お客様一人ひとりが真に求める憧れのライフスタイルを、広い視野で洞察し、研ぎ澄まされた商品を具現化していきます」とした。また、信頼では、「私たちは、真摯にお客様と向き合い、誰もが心から満足し、安心して長くつき合える品質を提供しつづけます」とし、ecoでは、「私たちは、地球環境を大前提に考える企業活動を通して、真に豊かな未来を実現していきます」とした。

 もちろん、それぞれの言葉には大きな意味がある。

 例えば「先進」。社内では「先端」という言葉も対象として議論された。

 なぜ、先端ではなく、先進なのか。

 「先端というと、どうしても技術的要素が強く感じられる。だが、先進という言葉では、より広い範囲を包含し、すべての事業領域に当てはめることができる。社員全員が共通の価値として捉えるには、先進という言葉の方が適していると判断した」

 モノづくり立社を掲げるパナソニックは、社員のすべての活動を商品に結集させることを打ち出している。モノづくりは開発、調達、製造だけの話ではなく、すべての社員が携わるというのがその基本的考え方だ。それは、大坪社長が常日頃から語る「衆知を集めた全員経営」につながる。

 そして、全員経営だからこそ、技術的要素を強く感じる「先端」ではなく、全社員が自然と共有できる「先進」という言葉を使ったのだ。

 また、こんな話もある。

 古川総括部長が、大坪文雄社長に草案を提示した際には、「環境配慮」という言葉が盛り込まれていた。

 現場では「環境」という言葉を盛り込むことに共通の理解を持っていたからだ。

次ページ「大坪社長はこれを一蹴した」に続く

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