パナソニックが取り組んでいるのは、「モノづくりのエコアイディア」、「商品のエコアイディア」、「ひろげるエコアイディア」の3点だ。
前回の連載で触れた「コトマエ」や「メタゲジ」という指標は、3つの取り組みのなかの「モノづくりのエコアイディア」で採用されている仕組みである。
その「モノづくりのエコアイディア」では、さらに、クリーンファクトリーへの取り組みや、工場緑化にも努め、先進事例として、白物家電の生産を行う滋賀県・草津の生産拠点を「エコアイディア工場びわこ」とし、モデル拠点化環境の観点から、地域と共存するエコアイディア工場と位置づけている。
エコアイディア工場の名称を冠した環境配慮型工場は、今後、プラズマパネル生産の尼崎、半導体生産の魚津などへと展開していく考えだ。
パナソニックでは、すでに254工場を環境配慮型の工場「クリーンファクトリー(CF)」に認定、2007年度実績で、認定率は85%に達した。そのうち、それぞれの国で最高レベルの環境負荷削減を達成しているダントツCFへの認定は、日本で4工場、中国で3工場、マレーシアで2工場の合計9工場となった。
一方、「商品のエコアイディア」では、家まるごとのCO2削減を標榜する。
「一般的な家庭において、当社の最新省エネ機器を活用すれば、商品によるCO2削減で42%、ネットワークの活用によるCO2削減で3%、家づくりによるCO2削減で6%、創エネルギーによるCO2削減で11%をそれぞれ削減でき、1990年時点の家庭に比べて、合計60%のCO2削減効果がある」(パナソニック環境本部環境企画グループの中村 昭グループマネージャー)とする。
90年の洗濯機を基準にすると、2008年のヒートポンプななめドラム洗濯乾燥機では、57%のCO2削減が可能になっているという。
家庭内で電気を使用する商品を数多く販売するパナソニックにとって、家庭内での消費電力削減は、社会的責任からも大きな課題だ。
家庭内での消費電力の内訳を見ると、エアコンが24.9%、照明器具が16.2%、冷蔵庫が15.5%、テレビが9.9%、電気カーペットが4.4%、温水洗浄便座が4.1%、衣類乾燥機が2.9%、食器洗浄乾燥機が1.7%――などとなる。つまり、家庭内の消費電力のほとんどを占める商品を、パナソニックは製造、販売している。
家まるごと提案を標榜する以上、家まるごと省エネは必須条件なのである。
同社では、省エネナンバーワン商品の構成比を、2008年度は150機種から、2009年度は200機種へと増加させ、資源エネルギー庁が発行する省エネ性能カタログに掲載されているテレビや冷蔵庫などの9品目に関しては、省エネナンバーワン製品比率を2008年度の17%から30%へと倍増し、省エネ低位の商品をゼロ化する考えだ。
商品のエコアイディアのなかには、半導体やモーター、断熱材といった部品レベルでの環境貢献も含まれる。
薄型テレビ「VIERA」やレコーダーの「DIGA」に搭載されているシステムLSIは、微細化技術を採用することで、消費電力の削減に成功。2000年時点の技術に比べて、消費電力は約3分の1にまで削減している。また、電源アダプタやドアホンなどに利用されるスイッチング電源用半導体では、間欠発振制御方式の採用により、待機時の消費電力を約6分の1となる0.07Wにまで削減した。
さらに、モーターでは、高占積巻線構造の採用によって、洗濯機や産業ロボットに使用されるDCブラシレスモータやMINASにおいては、従来のACインダクションモーターに比べ、消費電力を約2分の1に削減。冷蔵庫やジャーポットなどに使用される真空断熱材「U-Vacua」では、多孔質芯材の採用、および真空化技術によって、ウレタン断熱材に比べて10倍の断熱性能を実現し、これも省エネ化に貢献している。
こうした数々の技術の採用が、最終商品のエコにつながっている。
次ページ「スーパーGP、ダントツGP」に続く
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