パナソニックの技術戦略を語る上で、避けては通れないものがある。
それがUniPhier(ユニフィエ)である。
このUniPhierの存在なしには、パナソニックのデジタル家電事業の躍進はなかったといっても過言ではない。
もともとパナソニックのデジタル家電のプラットフォームは、個別商品ごとに開発されていた。携帯電話、パーソナルAV、カーAV、ホームAV、ホームセキュリティ――。それぞれが個別最適を狙い、おのおのにプラットフォームを開発していたのだ。
「全世界において同時並行的に、デジタル家電が急速に普及する時代となり、あわせて機能統合、高機能化によって開発規模が激増している。とくにソフトウェアの開発規模の増大には目を見張るものがある。それにも関わらず、想定を超える速度で価格下落が進展する。こうしたデジタル時代の競争環境において、戦えるためのプラットフォームが必要だった。それがUniPhierである」と、古池進代表取締役副社長は語る。
UniPhierは、設計の共通化、ソフトウェアの共通化などによる商品横断型の共通プラットフォームとする一方、同社の半導体技術を生かした高集積化によって、高機能と低コストを両立するものだ。
商品分野ごとの技術の壁を打破し、全体最適プラットフォームとして展開することで、商品開発期間の短縮、コスト削減効果のほか、パナソニックが得意とするリンク機能の実現にも寄与している。
AVCネットワークス社社長を務める坂本俊弘専務は、「薄型テレビのVIERAから、レコーダーのDIGAへのソフト流用率は79%、地デジ車載テレビでは90%、ビデオカメラでは53%ものソフトを相互に流用できる。UniPhierによって、ハイディフィニションプラットフォームの共有化が可能になったことで、開発効率を抜本的に改革できた。レコーダーを例にあげれば、セット開発のリードタイムは16か月から5か月へと、3分の1にまで短縮している」とする。
量販店のBDレコーダー売り場に行くと、パナソニックのブルーレイDIGAだけが、極端に薄いのがわかる。
これも、実はUniPhierによる成果だ。
パナソニックは2007年11月に投入したDMR-BW800において、薄さを59mmとした。従来のBW200が85mmであったのに比べると約30%も薄くなっている。
搭載されたのはPEAKS Pro2。基板面積は、45nmプロセスのUniPhierの採用によって約27%削減され、さらにハイビジョン録画、VC1再生機能、高画質処理、IEEE1394といった主要LSIをワンチップに統合するとともに、MPEG-4AVC機能を搭載。加えて、消費電力を44Wと従来比21%の削減を達成した。この進化は留まらず、2008年9月のDMR-BW830では、29Wまで消費電力を削減し、アクトビラビデオへの対応も1チップのなかで実現した。
競合他社が複数のLSIで構成しているのに比べると、その差は歴然だ。なかには、8チップ、9チップ構成としているメーカーもあり、それはそのままコスト競争力、消費電力の差に表れる。
「見る人が見れば、筐体の蓋を開けただけで、パナソニックの技術が大きく先行していることを理解できる」と古池副社長は、UniPhierの技術的優位性が、そのまま最終商品の競争力につながっていることを強調する。
次ページ「UniPhier 5つのロードマップ」に続く
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