2007年10月、パナソニックは中期経営計画「GP3計画」のなかに、環境経営を取り入れることを発表した。
会見で大坪文雄社長は、「2006年度に398万トンだったグローバルCO2(二酸化炭素)排出量を、2009年度までに30万トン削減し、368万トンとする。GP3計画ではグローバルエクセレンスへの挑戦権獲得を目指しているが、環境対応はそれに向けて不可欠な要素である。また、当社には『企業は社会の公器』という考え方があり、その点からも、環境への取り組みは、今後の企業経営にとっては避けては通れないもの。GP3計画がスタートして半年を経過したが、新たな項目を数値として加えるには、まだ時間的にも遅くない。成長戦略とともに、環境に対する具体的な数値を加え、計画達成に取り組んでいく」と語った。
同社では、2大事業ビジョンとして、「ユビキタスネットワーク社会の実現」とともに「地球環境との共存」を掲げている。これに加えて、GP3計画においても、「収益を伴った着実な成長」だけでなく、新たに「すべての事業活動で環境負荷を削減する」ことを加えた。さらに重要課題として「地球温暖化対策の加速」、「環境経営をグローバルに推進」という2つの環境テーマを掲げたのだ。
一般的に、成長戦略あるいは構造改革を目的とする中期経営計画に、環境経営を盛り込むのは異例である。むしろ、成長戦略と環境戦略は相反するものとの認識すらある。だが、パナソニックではこれをあえて盛り込んだ。
生産拡大とエネルギー削減は矛盾なく実現できる
「軽薄短小のコンセプトやアイデアが、省エネや省資源につながる。生産拡大とエネルギー削減は矛盾なく実現できると考えている。商品企画から調達、販売、物流、リサイクルに至るまでのすべてのモノづくりプロセスで生産性向上を図り、活動全般におけるCO2排出量削減に努める。品質、歩留まりなど、ブレイクダウンした数値目標を立て、IT革新による出張・出勤の減少、ペーパーレス化などもCO2削減の要素になる。経営の改革が、CO2削減につながる」と、大坪社長は断言した。
環境経営のなかで、同社が打ち出した言葉は「eco ideas」。これは、2007年4月に発表されたものだ。世界70カ国において、100以上の意匠登録を行っており、全世界のパナソニックグループ共通の言葉として使用されている。
パナソニックのタグラインに使われている「ideas for life」になぞらえ、常に従業員が環境に関して意識を持ち、一歩先を行くアイデアを発揮。そして、衆知を集めて、エコを広げる活動につなげるという意味を込めたものである。
「当社がグローバルエクセレンスと呼ばれるとき、その要素のひとつとして、環境に先進的に取り組んできたことが評価される。そんな企業になりたい」と、パナソニック環境本部環境企画グループの中村 昭グループマネージャーは語る。
だが、課題がないわけではない。GP3計画で盛り込んだ30万トンのCO2削減目標は、製造業として最も直接的な課題となる「生産活動におけるCO2排出量削減」について、CO2排出量を売上高や生産数で割った「原単位」での削減ではなく、「総量」で削減することを目指すものになる。
具体的には、全世界294拠点の製造事業場から排出されるCO2の総量を、生産規模を拡大する中でも、3年間に30万トン削減し、それをベースに、2010年度には2000年度の排出量水準である約360万トンへと戻す計画だ。
次ページ「巨大PDP工場の稼働開始でもCO2の総量は減らす」に続く
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