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経済予備校 第7回

最終回~ノックダウン寸前の日本の景気~

世界のカネ余り現象と怖い日本の将来

2008年08月25日 04時00分更新

文● 金山隆一

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頼みの綱の新興国への輸出も……

 米国の消費が落ち込むなか、頼みの綱は中国やインドなど高成長を続けている新興国への輸出だ。しかし、これらの地域も米国経済の低迷や資源価格高騰の影響を受け始めている。アジアの新興国も日本と同様に原材料の多くを輸入に依存しているからだ。

「食料や燃料などの高騰は、それらの輸入依存度が高く、低所得層が相対的に多いアジアの国々の消費生活を直撃します。2008年4~6月期には、中国を除くアジア向け輸出の伸びが大きく鈍化し始めています」(岡田氏)

 もともと今回の景気回復期は、輸出主導、大企業主導で進んだものの、賃金が上昇せず、個人消費の明確な回復までは至っていなかった。そこへ米国を中心とする外需(輸出)の低迷、原材料の高騰による企業収益の圧迫、ガソリンや食料品などの値上げによる個人消費の低迷というトリプルパンチに見舞われているのが、日本の景気の置かれている現状なのだ。それだけに、頼みの綱となるアジアなど新興国の経済成長も大きく鈍化することになれば、日本の景気はさらに悪化することになるだろう。

■意外と知られていないポイント
日本企業のカネ余り!

 史上空前のカネ余りは、実は日本国内でも起きている。2008年3月期決算の上場企業だけでも、手元資金は約46兆円もあるのだ。

 なぜこれだけ企業はおカネを溜め込んだのか。最大の理由は、バブル崩壊後に長く続いた景気低迷で、企業は「設備」「雇用」「債務」という3つの過剰のリストラを徹底し、財務体質を健全化させようとした。この結果、キャッシュリッチになった企業が増え、これらの企業は当時「財務体質が健全な企業」と評価された。しかし、企業は本来、利潤を追求し、成長を続けなければならない。余っているおカネがあるなら、将来の収益に結びつく設備投資や研究開発、M&Aなどに使わなければならないのに、慎重になり過ぎた経営者がおカネを溜め込む一方で、新たな投資先を見つけられないでいるのだ。

 このあり余るおカネは、賃金に回ることもなかった。企業は好不況の波を恐れて正社員を増加させずに派遣社員や契約社員などの非正社員を景気の安全弁として増加させる一方、正社員の賃金の上昇も抑えた。この結果、日本企業の労働分配率、つまり儲けたおカネをどれだけ従業員に「分け前」として割り当てたかを示す比率も上がらない状態が続いているのである。この「企業栄えて人栄えず」の構図が、戦後最長と言われる景気回復を実感できなかった最大の理由であり、その実感なき景気回復もいま終えんを迎えようとしているのだ。

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