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経済予備校 第7回

最終回~ノックダウン寸前の日本の景気~

世界のカネ余り現象と怖い日本の将来

2008年08月25日 04時00分更新

文● 金山隆一

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経済予備校

「経済予備校」ではこれまで6回にわたり、経済や社会を知る上でカギとなるキーワードについて解説してきた。連載最終回の今回は「日本の景気」を取り上げる。私たちは実感できていないが戦後最長の回復をとげていた日本の景気が、後退局面に入った。世界では“カネ余り”の状況にあるという。今後の日本の景気はどうなっていくのだろうか。

日本だけには回ってこない!?  世界の“カネ余り”

 1京5000兆円。数の単位として1000兆の次が1京であることは誰でも知っているが、実際にその数字の規模の「おカネ」がこの世に存在すると聞いたら驚く人はいるだろう。実はこの1京5000兆円という金額こそが、2006年の世界中の預金と株式時価総額と債券発行残高の合計、つまり世界の金融資産の総合金額なのである。米ドルに換算して世界の金融資産は、1995年で約63兆ドルだったものが、2006年には約152兆ドルと、約2.5倍も増加したのだ。

 これだけのおカネが世界にありながら、日本にそのおカネが回ってこない。最大の理由は何か。日本が将来、高い成長が期待できないと見られているからだ。

■世界のカネ余り─基本─

 世界の金融資産が増加した契機の1つには、2000年のITバブル崩壊以降、先進各国の中央銀行が金融緩和、つまり金利引き下げを行なったことにある。金利が低ければ、投資家は低利で調達したおカネをより有利に運用するために、収益期待の大きい金融商品や新興国などに投資する。この結果、新興国をはじめとする世界の株式や不動産などの資産価格が上昇し、世界の金融資産を膨張させた。

 さらに1990年代には、米国や欧州で株式をおカネの代わりとして企業買収に使う株式交換方式でのM&A(企業の合併・買収)が増加した。これが株価を押し上げる循環を生み、世界の株式時価総額、とりわけ欧米の時価総額を底上げした。実際、欧米はこの10年で約60兆ドルも金融資産を増やしたのである。

 米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発する欧米の金融不安や原油高などを背景に、世界の株式時価総額は過去最高だった2006年10月末の約63兆ドルから、2008年6月末には約52兆ドルに減少。わずか8カ月で世界の株式時価総額は11兆ドルも減少したものの、世界は依然として大幅な「カネ余り」状態にある。

 おカネを持つ投資家は少しでも高いリターンを目指そうとする。しかし先行きの経済成長率が低ければ、投資に対するリターンも低くなる。つまり日本のように少子高齢化と人口減少社会を迎え、経済の力強い成長が期待できない国は投資する魅力が乏しく、BRICs(経済発展が著しいブラジル、ロシア、インド、中国のことを指す経済用語)など、人口が多く、近年高い成長を遂げ、今後も成長が期待される新興国への投資が優先される。その結果、日本におカネが回ってこないのだ。

 さらに日本では、2007年の参議院議員選挙で自民党が大敗、規制緩和や外資への市場開放が進まず、改革が停滞するとの見方が外国人投資家の間に広がり、それがさらに日本への投資を遠ざけている。

 問題は、そうした状況のもとで、緩やかながらも成長してきた日本の景気についに陰りが見えてきたことである。8月13日に内閣府が発表した日本の4~6月期のGDP速報値は、物価変動を除いた実質の年率換算で2.4%減となった。これに先立つ7日には、政府が月例経済報告において「景気はこのところ弱含んでいる」と景気判断を下方修正し、4年8カ月ぶりに「回復」の表現を削除した。2002年2月から続いた戦後最長の景気回復が後退局面に入ったのである。

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