M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略で、企業の「合併と買収」を意味する。もはや経済メディアで目にしない日はないほど一般的な言葉となった。ある企業が新たな技術やブランドの取得、市場の開拓、国際展開などを図るために合併したり、企業を買収したりすることをいう。経営の効率化や収益向上に向けた事業の「選択と集中」のために不採算事業を売却するのもM&Aの1つだ。
自分の会社のM&A、テレビで知る……
「テレビのニュースで自社のM&Aをはじめて知った」というエピソードがある。しかし、この冗談のような話は、現実に起こっている。自らもM&Aを経験し、現在は企業のM&A時における統合の支援業務を行なっているnaoIT研究所代表の増岡直二郎氏に、システムエンジニアやシステム管理者はどのような状況に陥るのかを聞いた。
「企業の経営者は、システム担当者の人たちが想像している以上にコンピュータシステムのことを軽んじています。合併や買収は経営陣で秘密裏に進められていきます。この段階でコンピュータシステムのことは、ほとんど考えられていません。合併や買収が決定して公表されてから、コンピュータシステム部門長のところに、はじめて話がいくことも多いのです」(増岡氏)
部門長ですら、テレビや新聞に取り上げらているのを見てはじめて知る場合があるということだ。一般社員なら、なおさら事前に知ることはできないことになる。しかも、この事後報告の状況は、その後も続くことになり、システム担当者は経営陣の決定に振り回されることになる。
■ケース「すべてが無駄だった! 大企業グループの子会社合併」
大企業のA社は、グループ会社の合理化による企業価値の向上を目的とし、子会社のB社とC社を合併した。A社は、B社とC社の事業を統合するために1フロアに置いたが、もともと両者の間には、分野や営業方法などに共通点が乏しく、フロアの右半分がB社で、左半分がC社というように、事実上分断せざるえない状態となってしまう。結局3年後、この分断状態から抜け出せず、双方の会社をB社とC社として元に戻す事態となった。
因みにC社は統合前まで、とある情報システムの専業メーカーとして評価を受けていたが、B社と合併したことで総合メーカーとなったために、すでに専業メーカーとして3年前に抱えていた顧客を失っていた。
結局このケースでは、両者のシステムエンジニアは、システムを統合する必要もなかった上に、B社とC社のシステム部門の管理者の人数が減らされ、C社が顧客を失っただけだった。しかも、経営陣は責任を取っていないという。
(次ページ、「ケース・対等統合とは名ばかり! 情報機器小規模メーカーの3社合併」へ続く)
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