「内部統制」という言葉には、「固い」「難しい」「義務」というイメージがつきまとわれがちだ。しかし、たった1人のミスで顧客情報漏えいなどがあれば、企業の信頼は崩落してしまうこともあるため、軽んじることはできない。企業は相応のリソースを割かなければならず、経営を圧迫するケースもあるだろう。企業にとって悩ましい「内部統制」と、どのように付き合っていけばいいのだろうか。
固いイメージが悪いんだ? 楽しめる内部統制、実行中!
ここ数年しばしば取り上げられ、その重要度が語られている「内部統制」。そもそも簡単に言うとどういうものなのか。
例えば下記のようなケース、
会社内で、取引先と商品購入のやり取りをする人と契約後に支払をする人が同一人物である
この場合、想像できるのは、この人物が金額を上乗せした伝表を作ることが容易なことから“着服しやすい”ということになる。もし、このケースで本当に着服があった場合、本人は当然お咎めがあるだろうが、しかし、そもそもこのような事態を許す会社の体制に問題があるのではないか。これに目を向けたのが、内部統制だ。企業が自ら「ミスや不正の発生を予防・発見できるプロセスを確立し、ミスがないこと、不正が行なわれていないことを証明する」ことを言うのである。
この内部統制。企業のいち社員にとって、正直「固い、小難しそう、義務……」という印象があるだろう。若手社員にとってはなおさらかもしれない。ソースネクスト(株)では、社員が能動的に内部統制に参加できるよう、さまざまな工夫を行なっている。
ソースネクストは、5年連続ソフトウェア販売本数シェア1位のベンダーに輝き、2006年6月に更新料無料のセキュリティソフトを発売すると、それまでセキュリティソフトシェア1位と2位だったシマンテックとトレンドマイクロを抜き、トップとなった企業だ。
「内部統制の監査をしているのは、比較的若い社員で組織化された内部監査委員会です。またセキュリティに特化したセキュリティ委員会という組織もあります。どちらも10名程度で構成され、重要なキャリアアップのための機関です。内部監査委員会やセキュリティ委員会を担当することで、社員自身が全社の業務を把握できるメリットがあるようになっています」(ソースネクスト 内部監査室 望月さん)
委員会を社内の重要なポジションに位置づけることで、任命された人もモチベーションを高めて担当してくれるという。また、上司から呼びかけるよりも、自分に近いポジションの同僚の呼びかけのほうが浸透しやすいという面もある。
「さまざまな性格の社員がいますから、きちんとルールを守ることが苦手な社員もいます(笑)。上から指導されるより、後輩、例えば新入社員から指摘される方が効果的な場合もあるでしょう。このように、社員1人1人に正しい倫理観を浸透できるよう工夫していけば、不正は起こらないと考えています」(望月さん)
(次ページ、「ちょっとだけゲーム感覚がコツ」へ続く)
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