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会社引っ越し ブレードで仮想化大作戦 第2回

~ ASCII.jpが試したから言える!ブレード&仮想化のホンネ ~

ブレード&仮想化 導入設置編「こんな時笑ってしまうのはナゼ」

2008年09月16日 06時00分更新

文● 志村 拓

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BIOSが見えるとフツーのPC

 これでHDDがブレードに繋がったハズだ。ブレードを起動してみることにする。各ブレードには電源ボタンの他に、|□|と書かれたボタンとCDと書かれたボタンが付いている。前者はKVMを、後者はCDドライブが付いたメディア・トレイを、そのブレードに切り替えるためのボタンだ。KVMのビデオ出力やキーボード、マウスを接続するためのUSBは、マネージメントモジュールに付いている。

|□|ボタン、CDボタンあたりが写ったブレードサーバーの写真

こいつらをポチッとすると、KVMやCDドライブを切り替えることができる。勿論マネージメントモジュールの画面からもソフト的に切り替えることができるので、デジタルKVMを導入した時には便利そう

 マネージメントモジュールに、液晶ディスプレイとUSBキーボードを繋いでから、ブレードの|□|ボタンで切り替え、電源ボタンを押してみる。見慣れた斜に構えたIBMのロゴが表示され、起動メッセージが表示されていく。 なーんだ、思いのほかフツー と思いながら、F1キーを押してBIOS設定画面に入る。マニュアルによれば、内蔵HDDを使わない場合はプレーナーSASを使用不可に設定し、SAS接続モジュール経由でストレージ・モジュールに差し込んだHDDを使う場合はSAS拡張カード・スロット用のオプションROMを使用可に設定しろとのこと。

 要するに、各ブレードに組み込んだSAS拡張カードはストレージ・モジュールのHDDを使うために必要なモノだったことが、ここにきて初めて理解できた。BIOSの設定操作は普通のPCのそれと変わらない。10枚のブレードに同じことをしなければならないのは面倒だが、KVMスイッチがあるので、端からやっていけばイイだけだ。

起動時のIBMロゴが表示されているところ

ここまでくれば、普通のx86サーバーじゃん、あとは簡単とこの時はまだ楽観的に考えていたが……

HDDが1台も見えない

 次に、起動時にCtrl-Cを押して、SAS拡張カードの設定画面に入る。ここで接続されたHDDのRAIDを構成する。この辺りも基本的にはRAID機能のついたPCやラックマウントサーバーとさして変わらない。勝手知ったる調子で設定画面に入ると、困ったことが起こった。 1台もHDDが見えていない。

 SASのゾーニングのやり方が間違っていたのか? それともBIOSの設定でまだ他に行うことがあるのか? 両手いっぱいの疑心暗鬼を抱えながら、はじめて真剣にマニュアルを読み始めるが、自分の行った方法に間違いもなければ漏れもない。

 IBMにはマシンの構築からOSのインストールまでを購入後90日間にわたって面倒をみてくれる“スタートアップ90”というサービスがある(実はこのお陰で、どこからIBMの機械を買ってもサポート的には安心だったりして)。慌ててスタートアップ90の申込書を書いてFAXで申し込むとともに、ハードウェア障害の可能性も考え、IBMの障害受付センターに電話をする。 2時間後、IBMサービス技術員登場。

 やっぱり、サポートがしっかりしているメーカーの機械は安心だ。ユーザーにダイアグ実行結果を要求することも無いし、対応は必ず翌日ということも無い。それにしても、これだけ素早い対応は、どれだけのフィールドエンジニアを用意しているのだろう? それとも、障害が少ないのか?

 ともあれ、これまでの設定に間違いが無いか、IBMサービス技術員(フィールドエンジニアということで以下FE氏と記す)に確認。特に設定に問題はないこと、確かにブレードからHDDが見えていないことを確認した。マネージメントモジュールのEthernetポートからSAS管理モジュールに接続すると、他にもいくつかの問題が発生している模様。

問題1
片方のストレージ・モジュールが見えていない    
→モジュールを抜き差し直すことで解決。
問題2
HDDの1台が見えていない     
→HDDを保守部品としてその場で手配、1時間で到着、交換。

ファームは上げとこ

 どーしても部品点数が多いと、中にはうまく動かないモノも入ってしまうモノだ。正常に動作している時は、ほとんど知識がなくても動かすことができるが、いざ障害が発生すると、知識不足で問題の切り分けもままならず、途方にくれてしまう。こんな時のためにも、 サーバー類での保守契約は重要だ。

 IBMのサーバー機器には最初から3年間の保守契約が含まれている。この辺りも勘案すれば、IBMの機材の価格は安価であり、今回の機種選定の大きなポイントとなった。さて、SAS管理モジュールからは、全てのHDDが認識され問題なく動作している状態となったものの、依然としてブレードサーバーのSAS拡張カードからは、HDDが見えない。

 戦闘開始から4時間余り、流石のFE氏にも少し疲労の影、FE氏の後ろで作業を見守る(だけでナニもしてない)筆者もマシンルームの空調の冷たく乾燥した空気に曝されすぎてビーフジャーキー寸前の状態だ。もうダメかと、何もしていない筆者が先に諦め始めた時だった、FE氏が携帯で何やら連絡をとっている。脱稿した後のライターのような清々しい笑顔で一言。 よーやく原因が分かりましたよ。

 やるなー、あんたプロだよ。カッコいいよ。と心の中で賛辞を呈しながら、事の次第を聞くと、SAS拡張カードのファームウェアが少し古いため、SATAのHDDを認識していない。ファームウェアをIBMのサイトからダウンロードしてアップデートすれば、認識するようになるハズとのことで、ブレードを1、2枚アップデートして様子をみてみることになった。

 それから1時間弱、フロッピーディスク(流石IBM!)を使ってアップデートしたブレードではめでたくHDDを認識し、RAIDを構成することができた。ハードウェア障害でないことが判明しましたので、残りのブレードはお客様の方でお願いできますか? と言われて、フロッピードライブなんかあったかなぁと不安を感じつつも、 勿論です。ありがとうございました。

 こうして5時間の死闘の末、問題は解決された。そう言えば、「ファームウェアのアップデートや各ハードでのバージョン揃えはキッティングの範疇」と教えられたことを思い出した。何事も手抜きしてはならないという教訓か。翌日、なんとか自宅のマシンルームを大捜索し、USBのフロッピードライブ(しかも運良くIBM製!)を発掘、SAS拡張カードのファームウェアは勿論、すべてのブレードについてBIOSもアップデートを行った。

 後で知ったのだが、BladeCenterにはサーバーの拡張カードも含むBIOSファームウェアを、まとめて最新にするためのUpdate Express System Pack Installer (UXSPi)と呼ばれるツールがあり、ダウンロードしたファームウェアを、CDやUSBメモリー等にBootableな形で書き出すことができたそうだ。分かっていればもう少し楽ができた。

 ようやく、動き始めたブレードサーバー群。これをどう使っていくかが問題だ。本当に全部仮想化システムのホストOSを動かしてしまっていいのか? って、「何も考えずに買うだけ買ってみた」のがバレバレだが、次回我々が実施した素敵で超安価な仮想化を紹介するので、乞うご期待。

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