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会社引っ越し ブレードで仮想化大作戦 第4回

~ ブレード&仮想化のホンネ ~ 今度はストレージが欲しくなっちゃった!

ブレード&仮想化2 現状編「事件は現場で起こってる」

2009年02月18日 08時30分更新

文● 志村 拓

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アスキー・メディアワークスが引越し、IBMのブレードサーバ「IBM BladeCenter S」を導入してから早5カ月が過ぎ去った。ところが、仮想化の達成率は予定の70%。いったい何が起きたのか? 問題は、主にストレージにある。共有ストレージをいかに構築するか?

 引っ越しでブレード&仮想化第2弾では、IBM BladeCenter S SAS RAID コントローラー・モジュールを使用した共有ストレージ構築を試してみた!

 新社屋にIBM BladeCenter Sが来たのが7月末。既に5カ月が経過した。事の次第については、前回の記事「会社引っ越し ブレードで仮想化大作戦」をご覧いただきたい。導入当初に色々とあったハードウェアは、その後はすこぶる快調で、弊社のITインフラの一翼を担っている。

 昔からコンピュータ業界はDog yearと言われ、技術革新の速度が他に比べ7倍速いとされている。いわば弊社のブレード環境は、既に3年弱前の話ということになる。その間、我々のBladeCenter S上の仮想化環境にも、奇々怪々な出来事が繰り広げられ、当初予定していた仮想化の達成率は70%にとどまっている。主たる原因は2つある。

ストレージという名の仮想化のハードル

 1つめの問題点は、共有ストレージがうまく用意できていないことだ。先回の記事ではiSCSIを使ってHDDの共有を行なってみるとしていたが、その後いろいろと試してみると、GbE+ソフトiSCSIでは速度が出ないことが判明した。少し考えれば至極当然の結果だ。

 仕方なく、NFSによる共有でなんとか誤魔化しているが、それとてHDDの速度には遠く及ばない。メディアの速度を考えてもSASの3Gbpsに対しEthernetは1Gbpsであり、プロトコルのオーバヘッドやキャッシュを差し引いても結構な差異が出るのは当然だ。

VMwareESXiで各ストレージを用いて比較してみた結果。なお、NFSとiSCSIは共にCentOSでソフト的に提供したもの
  VM Suspend VM Restart hdparam -t
Local 23s 4s 70MB/s
NFS 41s 2s 100MB/s
iSCSI 170s 2s 33MB/s

 しかも、SAS接続モジュールのマッピングで1ブレードに2台のHDDを割り当て、個々のブレードのSAS拡張カードでRAID1(ミラーリング)するようにしてしまったため、1ブレードあたりのHDD容量は750GBしかない。今どき750GB共有ストレージは微妙だ。仮想マシンファイル置場にするには、うすら寒い状況だ。

弊社のブレードサーバーの論理構造

弊社のブレードサーバーの論理構造

 仕方なく多くの仮想マシンファイルをブレード個々に割り付けたHDDに持たせている。こうした運用でも、ハードウェア障害に対してはブレードを差し替えることで、比較的簡単に対処できるので問題はない。が、仮想マシンの負荷状況に伴い、実行するブレードを切り替えようとすると、途端に面倒なことになる。

 たとえば、1枚のブレードで5つの仮想マシンを動かしていて、その中の1つの仮想マシンの負荷が高くなってしまった場合、その仮想マシンを比較的CPUが空いている別のブレードで動作させたくなる。こうした場合、作業自体は簡単で、該当仮想マシンをサスペンドしたうえで、仮想マシンファイルを別のブレードのHDDにコピーし、実行再開すればよい。

 しかし、実際にやってみると、これが意外に煩雑で、何しろ仮想マシンファイルの中には仮想HDDのファイルも存在し、少なくとも数十GBからモノによっては数百GBにもおよび、単純にファイルをコピーするだけでも数十分以上かかってしまう。もちろん、その間その仮想マシンで提供しているサービスは停止してしまう。

仮想マシンの別ブレードへの移行

仮想マシンを別のブレードで実行するには、ブレード間で数十GB以上の仮想化ファイルのコピーという苦行を伴う

 本来なら、全ブレードで供用可能な高速ストレージ、DS3200などの専用ストレージをガツンと導入し、BladeCenter SのSAS接続モジュールにSASケーブルで接続すれば、そこに全ての仮想マシンファイルを置けるのだが、何せ先立つものがない。しかも残念ながらIBMの資料によれば、DS3200をBladeCenter Sに接続できないとなっている。トホホホホ。

 勿論、SAS接続モジュールのゾーニングを切り直して、共有ディスクを作るという手も無くはないが、後述のとおり、すでに仮想マシンによるサービスを開始しており、既になかなか止めにくい状況になっている。

次ページ「もう1つの問題―仮想マシン自体」に続く

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